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薬学用語解説

アポトーシス

作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
生物系薬学部会
© 公益社団法人日本薬学会

細胞死の主要なものには、ネクローシス(necrosis;壊死)とアポトーシスの二つのタイプがある。アポトーシスは多細胞生物の細胞において、さまざまな生理的・病理的要因によって誘導される能動的な細胞死であり、重要な細胞増殖制御機構である。ヌクレオソーム単位で染色体DNAが断片化され、死んだ目印となるホスファチジルセリンが細胞表面に露出される。一方ネクローシスは、栄養不足、毒物、外傷などの外的要因により起こる受動的細胞死であり、細胞内容物の流出を伴う。 アポトーシスでは、細胞は萎縮して隣接細胞から離れ、クロマチンの凝縮、核の断片化、細胞膜が壊れないで細胞の断片化などが起こってアポトーシス小体が形成される。細胞の内容物が漏れ出す前にマクロファージなどの周辺の細胞がアポトーシス細胞を貪食するので、細胞内容物の漏出は起こらず、炎症を伴わない。 個体発生の過程でさまざまな臓器や組織での余分な細胞の除去、がん化した細胞や内部に異常を起こした細胞の除去、自己抗原に反応する細胞の除去などにおいて重要な役割を果たす。アドリアマイシンやビンブラスチンなどの多くの抗腫瘍薬の作用機構は、アポトーシス誘導によると考えられる。また、ウイルス感染やステロイド、放射線、TNFα(腫瘍壊死因子(tumor necrosis factorα)などのサイトカインによる刺激、虚血などによってもアポトーシスが誘導される。 アポトーシスはいくつかの経路によって引き起こされるが、最終的な共通段階はカスパーゼ(caspase)という一群のシステインプロテアーゼの連鎖的活性化を介して起こる。哺乳類では、TNFαやFasL( Fasリガンド)などが属するデス因子群とそれらの受容体群によって構成される高度なアポトーシス誘導経路、DNA損傷などに起因してミトコンドリアから放出されたシトクロムcなどが関与する経路、小胞体ストレスによって誘導される経路などがある。