薬学用語解説
シトクロムP450
CYPP450チトクロムP450
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
生物系薬学部会
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細菌から植物、哺乳動物に至るまでのほとんどすべての生物に存在する、分子量約45000から60000の酸化酵素で、異物(薬物)代謝においては主要な第一相反応の酵素。約500アミノ酸残基からなり、活性部位にヘムを持つ。保存されたシステイン残基と水分子がヘムの鉄原子にリガンドとして配位する。還元状態で一酸化炭素と結合して450nmに吸収極大を示す色素という意味でシトクロムP450(P450)と命名された。動物では主に肝臓に存在し、肝以外にも腎、肺、消化管、副腎、脳、皮膚などほとんどすべての臓器に少量ながら存在する。NADPHの存在下で基質を水酸化する。P450は基質特異性の異なる複数の分子種からなる遺伝子スーパーファミリーを形成している。全生物では700種類以上、ヒトでは50種類程度の分子種が報告されている。各々の分子種は基質特異性ではなくアミノ酸の相同性に基づいて命名されており、CYP1A1のように接頭語CYP(cytochrome P450)、ファミリーを示すアラビア数字、サブファミリーを示すアルファベット、分子種番号を示すアラビア数字の組合せで表される。薬物(異物)代謝型のシトクロムP450の基質は脂溶性で、蓄積すると毒になるものが多い。ポリ塩化ビフェニル(PCB)や、フェノバルビタールをはじめとする多くの薬物である。これら基質の多くにはシトクロムP450の発現を誘導する性質もある。カルシウム拮抗剤などでグレープフルーツ果汁との併用により副作用が増強することがある。これはCYP3A4の活性が阻害され薬物の代謝が遅くなるためとされている。逆にセントジョーンズワートはCYP3A4を誘導し薬物の代謝を速めるとされる。またCYP2D6などの遺伝的多型により各種薬物の代謝速度に個人差が現れることが知られている。内因性物質代謝(合成)型はCYP7~27のファミリーに含まれ、ステロイドや脂溶性ビタミン類などに対して高い基質特異性を示す。