薬学用語解説
ヘム生合成
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
生物系薬学部会
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ヘム生合成は、ミトコンドリア内における、グリシンとスクシニルCoAを基質とするδ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)によるδ-アミノレブリン酸(ALA)生成過程を初発反応とし、全8段階の酵素反応を経て進行する(図参照)。細胞質に移動したALAは、ALA脱水酵素(ALAD)により2分子が縮合してポルホビリノーゲン(PBG)へと変換される。4分子のPBGは、PBG脱アミノ化酵素(PBGD)により連結されて、ヒドロキシメチルビラン(HMB)を生成する。HMBからウロポルフィリノーゲンIII合成酵素(UROS)により、ウロポルフィリノーゲンIII(Uro'gen III)を生じる。Uro'gen IIIは、ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素(UROD)により、側鎖のカルボキシル基が脱炭酸され、コプロポルフィリノーゲンIII(Copro'gen III)へと変換される。Copro'gen IIIは再びミトコンドリアへ輸送され、コプロポルフィリノーゲン酸化酵素(CPO)により酸化され、プロトポルフィリノーゲンIX(Proto'gen IX)となる。Proto'gen IXは、プロトポルフィリノーゲン酸化酵素(PROX)により酸化され、赤色のプロトポルフィリンIX(PPIX)となる。ヘム生合成の最終段階は、フェロケラターゼ(FECH)による反応で、PPIXに二価鉄が挿入され、ヘムを生成する。 ヒト体内のヘム生合成は、主として幼若赤血球と肝臓で行われるが、その調節機構は異なり、幼若赤血球では分化段階に応じて調節されるのに対し、肝臓ではヘム含量によりネガティブフィードバックがかかり、ヘム濃度を一定に保つように調節されている。 ポルフィリン症は,ヘム生合成経路における8種の酵素のうち後半7つの酵素のいずれかの欠損に起因する疾患の総称である。