薬学用語解説
優性の法則
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
生物系薬学部会
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エンドウの種子の形に、滑らかなものとしわがあるものの2種類存在することに着目したメンデルは、それぞれの純系を交雑することにより、子の世代(F1)の種子の形を観察した。その結果、いずれも滑らかな種子であった。このときメンデルは、F1に形質が現れる方を優性、かくれる方を劣性と呼んだ。純系の親世代がもつ「滑らか」を表す遺伝素因をR、「しわ」を表すものをrとすると、F1世代はすべて、それぞれの親から受け継いだ遺伝素因Rrを併せ持つことになり、優性な「滑らか」の形質が現れる。このことを優性(優劣)の法則という。メンデルの法則のひとつである。ただしここで優性とは、表現型にあらわれることを指すものであって、滑らかな種子がしわのある種子に比べて優れている、というわけではない。誤解を防ぐために、優性のかわりに顕性、劣性のかわりに潜性という言葉が用いられることもある。現在では、2倍体生物において、対を成す相同染色体上に存在するアレル(対立遺伝子)が異なる形質を表すとき、表現型にあらわれるアレル(対立遺伝子)を優性アレル(優性遺伝子)という。メンデルが示した実験結果は、完全優性を示すアレル(対立遺伝子)の組み合わせであり、異なる形質を表す遺伝子が組み合わされたときに、中間の形質を示す不完全優性も存在する(マルバアサガオの花の色など)。