薬学用語解説
分子軌道計算(密度汎関数法)
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
化学系薬学部会
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分子軌道計算とは、シュレディンガーの波動方程式に基づき,電子の分子軌道を計算することであり、これにより分子の最安定構造やエネルギーを求めて、構造や化学反応などに関する特性を理論的に調べることができる。計算過程で経験的なパラメータを導入したり計算を簡略化して解く半経験的分子軌道法と、最初から近似なしに解く非経験的分子軌道法(ab initio法)の2つに大別され、一般に後者のほうがより正確に見積もることができる。分子軌道法では1電子に注目して波動関数を見積もることになるが、分子には複数の電子が存在するため、それら電子間の相互作用を見積もりつつ、計算コストを抑えて高精度な結果を得ることが重要となる。のちにHohenberg と Kohn により、電子密度が与えられれば系の基底状態における電子エネルギーが確定することが証明され、これをもとに、多電子系のエネルギーを電子の波動関数の代わりに電子密度の汎関数から計算する手法が開発された。 電子密度は空間座標の関数であり、電子エネルギーを構成するエネルギー項はさらに電子密度の関数であるため,関数の関数という意味でエネルギーは電子密度の汎関数である、ということになる。Ab initio法に比べ計算時間が短くて済むにもかかわらず、同程度の精度の計算結果を得られることが多い。 (参考:すぐにできる量子化学計算、平尾公彦、講談社)