薬学用語解説
ベンゼン
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
化学系薬学部会
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ベンゼンは最もシンプルで代表的な芳香族化合物でC6H6の示性式で表される分子量78、融点5.5度、沸点80度の有機溶剤。ベンゼンを構成している6個の炭素はすべてsp2混成軌道を持つ。これら炭素の三つのsp2軌道のうち、二つは隣の炭素のsp2軌道とδ結合を、残りの一つは水素の1s 軌道とδ結合を形成する。このsp2混成炭素は六員環平面に対して垂直方向に一つのp 軌道をもつ。このp 軌道は両隣の炭素のp 軌道と等しく重なり合って、環平面の上下にドーナツ型の電子軌道を形成する。この軌道の中に各炭素のもつ計6個のπ電子が特定の炭素に帰属することなく非局在化した状態で収容される。したがって、ベンゼンの6個のC-C 結合は等価で、単結合でも二重結合でもなく、その中間の性質を有する。ベンゼン環は電子が豊富にあるために一般に求電子試薬と反応(芳香族求電子置換反応)する。代表的な芳香族求電子置換反応としてハロゲン化、ニトロ化、スルホン化、フリーデルクラフツアルキル化反応、フリーデルクラフツアシル化反応などがある。