薬学用語解説
咳嗽
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
医療薬科学部会
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咳。肺内の空気が気道を通じて爆発的に流出する突発的呼吸運動。咳には、気道内での過剰の分泌物や滲出物の排泄を伴った湿性咳と、伴わない乾性咳がある。気道に侵入した刺激性のガスや異物、気道内分泌物、炎症(咽頭炎、気管支炎、肺炎)による物理的・化学的刺激により生ずる。咳反射は咳受容体の刺激により求心性神経を介して延髄の咳中枢に至り、遠心性神経(迷走、横隔、脊髄神経)による声門の閉鎖、呼気筋群の収縮により発生する。最近では、気道粘膜への刺激が気管支収縮を起こして咳反射を誘発するという説もある。本来異物を排除するための防御的反応であり粘液や分泌物などの喀出の目的からは、一概に鎮咳してよいわけではない。一方、持続的な咳は睡眠障害、食物摂取の障害、肺胞の障害・肺気腫の原因となるので咳発作を抑制することも必要となる。 咳を抑える鎮咳薬(咳止め)には咳中枢の求心性刺激に対する閾値を上昇させる中枢性鎮咳薬(コデイン、ジヒドロコデイン、デキストロメトルファン、ジメモルファンなど)と気道粘膜の求心性インパルスを抑制する末梢性鎮咳薬(含嗽薬、局所麻酔薬、去痰薬、気管支拡張薬など)がある。