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薬学用語解説

HIV

作成日: 2023年07月22日
更新日: 2023年11月02日
医療薬科学部会
© 公益社団法人日本薬学会

レトロウイルス科のヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって起る、全身性の免疫不全症候群。感染は、HIV感染細胞または遊離ウイルスが混入した血液、精液や膣分泌液などの体液、母乳および血液製剤などから輸血もしくは性交が主であり、ほかにも感染した母親からの胎児への子宮内感染、産道感染および新生児への授乳感染もある。HIVはCD4陽性のT細胞やマクロファージに感染するが、感染数週間後に発熱、咽頭痛、リンパ腫脹などの風邪様の症状を発症する。この急性期には体内でのウイルス増殖と細胞性免疫によるウイルス排除が起るが、一部のウイルスは残る。抗HIV抗体は感染6~8週目に陽性となり、同時に急性症状が消失して無症候期間になる。この時期の感染者を無症状病原体保有者(キャリア)と呼ぶ。やがてCD4陽性T細胞数が減少し宿主の免疫が低下すると、全身のリンパ節が腫脹する、持続性全身性リンパ節腫脹症がみられるようになり、続いて発熱、体重減少、倦怠感、下痢を発症する。さらに免疫低下すると、カリニ肺炎、結核、性器ヘルペスなどの日和見感染症やカポジ肉腫などを発症してエイズと診断される。感染から発症までの期間は、一般に数年から10年以上までと長い。この宿主の免疫低下の進行は、CD4陽性T細胞の数や、T細胞のCD4/CD8の比によってモニターすることができる。なお、母子感染では、新生児の免疫系が発達していないため、エイズの進行がはやい。後天性免疫不全症候群は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では五類感染症に指定されている。