薬学用語解説
実薬対照試験
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
レギュラトリーサイエンス部会
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薬の臨床試験において、被験者を実薬対照群か治験薬群にランダムに割り付ける試験のデザイン。治療効果の明らかな実薬(既存薬)を対照薬として治験薬と比較する試験であり、通常ランダム化二重盲検で行われる。試験の目的としては、治験薬の対照薬に対する優越性を示す場合と、非劣性又は同等性を示す場合がある。非劣性又は同等性試験では、対照薬が適切な用法・用量で用いられ、十分な分析感度(もし対照薬と治験薬との間に差があるならば、その試験はその差を識別できることと)を持っていなくてはならない。有効性が既に認められている対照薬に対して非劣性であれば、治験薬の有効性を示すことができ、また治験薬の方が優れているという結果であれば優越性を示すものとして解釈できる。一方、有効性が適切に評価されていない薬剤など、対照薬が適切に用いられていない試験計画では、治験薬の優越性が示されない限り、非劣性試験としても使用できない。 実薬対照試験は、全ての被験者が実薬あるいは治験薬を投与されるため、一般にプラセボ対照試験よりも倫理上及び実施上の問題は少ない。しかし、治験薬を投与される被験者は標準治療を受けていないことになる。対照薬による治療が生存率を改善したり、回復不能な障害の発生を減少させることが明らかな場合は、治験薬の使用については適切な根拠が必要である。治験薬が対照薬と同程度に良い結果を示すことを予想しうる強い証拠がない場合には、一般的な標準治療へのアドオン試験(上乗せ試験)のデザインがより適切であるとされている。また、ランダム化二重盲検比較試験では、被験者と治験実施医師のバイアスは小さいものの、両者ともにプラセボを使用していないことは分かっている。抗うつ薬の試験のように主観的な評価が行われる場合には、ボーダーライン上の症例を成功側としてしまい、非劣性の結果を導きやすいという欠点があるとされている。