薬学用語解説
メタアナリシス/メタ解析
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
レギュラトリーサイエンス部会
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過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し評価する系統的レビューのうち、統計的方法を用いて解析する研究方法である。採用するデータは、的確な基準と方法に基づいて、信頼性の高いものにしぼり、異なるデータを統合する際には、サンプルサイズの違いを考慮し、それぞれに重み付けを行う。一般的には、様々な試験の要約統計量を用いるが、生データを結合して解析する場合もある。叙述的な総説とは異なり、体系的、統計学的、定量的に研究結果をレビューするという特徴がある。メタアナリシスは、複数の研究で得られた効果が一致しない場合、個々の研究の標本サイズが小さく有意な効果を見いだせない場合、大きな標本サイズの研究が経済的・時間的に困難な場合、に有用であるとされている。 一般に医学分野では、対象や研究方法が多様で各種のバイアスが入りやすく、また研究の質のばらつきが大きいことがある。例えば、公表論文は有意な結果のみが発表されることが多い。これは研究者がポジティブな結果が得られたときにのみ発表する「報告バイアス」や、学会誌等の編集者が、統計学的に有意な結果の得られていないものは論文を不採択とする「出版バイアス」のためである。このため、単に報告を集めるだけでは、ポジティブ方向へバイアスがかかるという懸念が指摘されている。また、質の低い論文を他の優れた研究成果と同等に評価対象としてしまうと結果の信頼性が低下することになる。メタアナリシスは、これらバイアスの影響を極力排除し、評価基準を統一して客観的・科学的に多数の研究結果を数量的、総括的に評価するものであり、科学的根拠に基づく医療(Evidence Base Medicine)の観点から、質の高い根拠を提供するものとされている。 こうしたメタアナリシス研究を押し進めることを目的として、1992年には、英国政府の支援の下、オックスフォードにUKコクラン・センター(UK Cochrane Centre, 現 Cochrane UK)が設立され、コクラン共同計画(The Cochran Collaboration)が開始された。The Cochrane Libraryには、コクラン共同計画によるメタアナリシスを実施した系統的レビューのデータベースが収載されており、ランダム化比較試験の行われたデータをすべて集め、その中から信頼できるものを選び、総合評価が行われている。