薬学用語解説
細胞膜受容体
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
医薬化学部会
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細胞膜上に存在し、ホルモンや神経伝達物質(細胞外シグナル分子)と結合して、細胞の内側に向けて新しい情報を送り込むタンパク質。ホルモンなどの水溶性シグナル分子は、直接細胞膜を通過することができず、それらに特異的な細胞膜上の受容体に結合してその情報を細胞内に伝達している。細胞膜受容体と結合するシグナル分子は、その受容体に固有の細胞内情報伝達系を作動させることができるので、受容体アゴニスト(単にアゴニスト)ともよばれる。一方、アゴニストと構造が類似するために受容体とは結合できるが、細胞内に情報を送り込むことができない分子はアゴニストと競合的に拮抗してアゴニストの受容体への結合を阻害し、その結果として情報の伝達を抑制するので、アンタゴニストあるいは拮抗薬(プロッカー)とよばれる。 細胞膜受容体は、その構造と細胞内への情報伝達機構の違いから、3種のグループに大別できる。第一の細胞膜を7回貫通するGタンパク質共役型受容体(GPCR)は、αβγサブユニットから成る三量体Gタンパク質を介して受容体刺激のシグナルを細胞内へと伝達している。第二のイオンチャネル内臓型受容体は、その分子内にイオンを透過するチャネル部位をもち、アゴニストの結合によってその開口が制御されるイオンチャネルとして機能している。さらに第三のタイプとして、受容体分子の細胞質ドメイン(あるいは受容体と会合する別の分子内)にチロシンキナーゼなどの酵素活性部位をもつ酵素共役型受容体があり、受容体刺激のシグナルをプロテインキナーゼなどの活性化を介して細胞内に伝達する。