薬学用語解説
酢酸-マロン酸経路
ポリケチド経路
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
医薬化学部会
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この経路の鎖延長の出発物質はアセチルCoAであり、炭酸化されたマロニルCoAとの脱炭酸を伴った縮合によりC2単位で増炭している。脂肪酸の合成では、縮合反応後にはβ-カルボニルの還元、脱水、二重結合の還元という一連の反応を繰り返す。この一連の反応を7回繰り返すとC16のパルミチン酸が、8回繰り返すとC18のステアリン酸が生成する。生成した脂肪酸鎖はさらに二次的な変換反応により修飾され、不飽和脂肪酸であるオレイン酸やポリアセチレン化合物、また、アラキドン酸カスケード代謝物であるプロスタグランジンも脂肪酸生合成経路の代謝産物である(図1)。一方、β-カルボニル基が還元を受けず、次々と増炭反応すると化学反応性に富んだポリケチド中間体が生成し、酵素上で分子内アルドール縮合やクライゼンエステル縮合の反応をし、安定な芳香環化合物(ポリケチド化合物)に変換される。構造上の特徴は、ポリケチド中間体のケトン基が1つおきに並んでいるので芳香環化したときには水酸基の形で互いにメタ位になっている。これらの例として、4つの酢酸単位(1つの酢酸出発単位と3つのマロネート鎖伸張単位)から生成するポリケトエステルは、2-7位でアルドール縮合することによりオルセリン酸が、1-6位でクライゼン反応することによりフロロアセトフェノンが生成する。また、天然物医薬品として重要なアントラキノン類は、C2単位が8個からなるオクタケチドで、C1単位、酸素原子の消失、メチレン基への酸素添加などの修飾を受けエモジンなどを生成し、さらに二量化、O-グリコシデーション化を受けると、センノシド類を生成する(図2)。