薬学用語解説
桂枝湯類
けいしとうるい
Keishito group
作成日: 2024年05月10日
更新日: 2024年05月10日
生薬天然物部会
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漢方処方の分類で、「桂皮」が主薬である桂枝湯(けいしとう)(桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草)を基本とした処方群である。病態に応じて桂枝湯に他の生薬を加減することで、その治療に幅を持たせている。桂枝湯類の代表的な処方を表に示す。桂枝湯は、「傷寒論」の最初に出てくる太陽病虚証に用いる重要な処方である。その適応は、悪寒、悪風、頭痛、発熱があり、汗が出ている状態に用いると記載されており、熱病初期の薬剤であることを示している。体力的に虚弱で消化機能が弱く、頻繁に風邪を引く傾向の人に適している。桂枝湯の芍薬(しゃくやく)を増量した桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)は、虚弱な人の腹痛、下痢、便秘などに用いる。これに膠飴(こうい)(餅米を蒸し麦芽で糖化したもの)を加えた小建中湯(しょうけんちゅうとう)は、腹部の緊張を緩め、胃腸の機能を調える働きが出るため、虚弱体質の改善や疲労回復に用いられる。桂枝湯に竜骨(りゅうこつ)と牡蛎(ぼれい)を加味した桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)は、やせていて顔色が悪く、神経過敏で疲労感を訴える人の精神不安に用い、また、朮(じゅつ)と附子(ぶし)を加味した桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)は、麻黄剤では強すぎて飲めない虚証の人の神経痛、関節痛、関節リウマチなどに適応する。なお、葛根湯(かっこんとう)は桂枝湯の構成生薬に麻黄(まおう)と葛根(かっこん)を加味したもので、主薬が桂皮から葛根と麻黄に変わることにより、体力が充実していて無汗な人の風邪の初期に用い、麻黄剤の関連処方に分類される。