薬学用語解説
マクロライド系抗生物質
macrolide antibiotic
作成日: 2024年05月09日
更新日: 2024年05月09日
生薬天然物部会
© 公益社団法人日本薬学会
14あるいは16員環の巨大ラクトン環にジメチルアミノ糖がグリコシド結合した構造をした抗生物質の総称。細菌などのリボソーム50Sサブユニットと結合してペプチド鎖の伸長反応を阻害しタンパク質合成を抑制することにより、静菌的に働く。エリスロマイシン、クラリスロマイシン、トリアセチルオレアンドマイシン(14員環)、ロキタマイシン、スピラマイシン、ジョサマイシン(16員環)などがある。主としてグラム陽性菌に有効であり、肝や肺などへの組織移行性が高く、β-ラクタム薬やアミノグリコシド薬では効果の低いマイコプラズマやクラミジアなどの感染症にも用いられる。球菌に対する抗菌力は強いが、大型なために外膜のポリンを通過できず、桿菌には無効である。CYP3A4によって代謝され、N-脱メチル化体となった後ニトロソアルカン体となり、ヘム鉄に共有結合してCYP3A4酵素活性を阻害することが知られている。ただし、このCYP3A4酵素阻害反応は14員環のエリスロマイシンやトリアセチルオレアンドマイシンでは起りやすいが、クラリスロマイシンや16員環化合物では起らないか弱い。近年は、これら抗細菌活性以外の抗微生物活性や抗炎症作用が臨床効果として注目され、抗ウイルス作用やびまん性細気管支炎ならびに慢性閉塞性肺疾患に有効であることが報告されている。