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薬学用語解説

定量的構造活性相関
ていりょうてきこうぞうかっせいそうかん
quantitative structure-activity relationship

作成日: 2025年12月19日
更新日: 2025年12月19日
構造活性相関部会
© 公益社団法人日本薬学会

基本骨格が同じ、あるいは互いに近縁な化合物群では、生理活性(受容体や酵素への結合活性、医薬品としての作用、毒性など)が置換基や立体配置、物性の違いによって系統的に変化することが多い。こうした化学構造と生理活性の関係を、化合物を表す特徴量(記述子)と活性値の統計・機械学習モデルとして定量化する枠組みを定量的構造活性相関(QSAR)という。「キューサー」と発音されることも多い。

実際には、複数の類似化合物(数十化合物程度から、場合によってはより大規模)について測定した活性値を、化合物を表現する特徴量によって回帰や分類などの形でモデル化する。特徴量としては、脂溶性や電子効果、極性、立体要因などの物理化学的性質の実測値・推定値、HOMO/LUMO など量子化学計算由来の指標、部分構造の有無や頻度を表すフィンガープリント(代表的には0/1のビット表現)など、0D〜3D記述子が広く用いられてきた。モデルが構築できれば、既知の化学空間内での活性予測や、活性・選択性・ADMET特性を含む多目的な化合物最適化、あるいは候補の優先順位づけに利用できることが期待される。ただしQSARの信頼性はデータ品質と化学空間に強く依存するため、学習データ外テストによる検証、ならびに適用可能領域(Applicability Domain)の確認が重要である。

最近では、化合物をグラフとして表現して学習する手法や、超大量の低分子化合物を事前学習した化合物基盤モデルAIを利用するQSARも盛んに試みられている。AIモデルによるQSARでは高い予測性能が得られる一方、従来のQSARで明確だった「化学構造―物理化学的解釈―活性値」の対応が見えにくくなる場合があるほか、依然としてドメイン外への外挿の弱さ、データリークやバイアスといった課題も知られている。そのため、予測結果に解釈性などの情報を付与し、実験設計や意思決定に安全に使える形へと整備する研究が進められている。