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薬学用語解説

コカイン
cocaine

作成日: 2025年06月18日
更新日: 2025年06月18日
環境・衛生部会
© 公益社団法人日本薬学会

南米、東南アジアなどで栽培されるコカノキ科、コカノキ(Erythroxylon coca)の葉に含まれているアルカロイドで、「麻薬及び向精神薬取締法」で麻薬に指定されているが、塩酸塩は医薬品として用いられている。粘膜に用いると知覚神経末梢を速やかに麻痺させ、局所麻酔作用を示す。中枢神経系では神経終末にあるドパミントランスポーター、ノルアドレナリントランスポーターおよびセロトニントランスポーターに結合・阻害し、各メディエーターの神経終末内への再取込みを抑制する。少量の摂取で、大脳皮質の刺激が軽度のときは快適感を催し、精神的ならびに肉体的に活力が増大した感覚を与える。中枢神経興奮作用によって幻覚や妄想などの精神疾患様の症状(精神毒性)を起こし、攻撃行動を誘発することから、凶悪犯罪の原因になることがある。この精神毒性は、コカイン摂取した直後(急性)だけでなく、常用者では慢性的に見られる。連用による慢性毒性は、便秘症、不眠、幻覚、精神の諸障害などである。注射では少量でもしばしば危険を伴うので、粉末を鼻で吸引するか、吸煙(加熱吸引)する方法で乱用される。妊娠中の女性がコカインを摂取することにより、早産、流産、胎児の死亡などの影響がみられる。また、新生児には被刺激性が高い、落ち着きがない、食物を摂取しない、呼吸や心拍数が速い、睡眠が不規則になるなどの影響がみられ、コカインベイビーといわれる。