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薬学用語解説

インクレチン
incretin

作成日: 2025年06月18日
更新日: 2025年06月18日
環境・衛生部会
© 公益社団法人日本薬学会

炭水化物や脂質の摂取後に消化管細胞より分泌され、グルコースによる膵臓からのインスリン分泌を増強させる消化管ホルモン。GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド glucose-dependent insulinotropic polypeptide)が知られている。血液中のグルコース濃度上昇に応じて膵臓から分泌されるインスリン量は、グルコースを経口投与した場合のほうが経静脈投与時よりも多い。このことから、消化管から分泌されインスリン分泌を増強する因子としてインクレチンがみいだされた。インクレチンの血糖依存的なインスリン分泌作用は,従来の血糖降下剤やインスリン製剤とは異なった新しい糖尿病治療薬の機序として期待されている。GLP-1はグルカゴンと同じ遺伝子から作られるペプチドであり、GLP-1(7-36アミド) や、GLP-1(7-37アミド) が血液中に検出される。GLP-1あるいは類似構造体は、欧米では医薬品として承認されている。GLP-1はDPP(ジペプチジルペプチダーゼ)-IV(CD26とその可溶性分子)により分解され失活し、血中半減期は5分程度である。GLP-1の作用として、グルコース依存性インスリン分泌促進、膵臓β細胞増殖作用、グルカゴン分泌抑制作用、胃排泄能抑制作用、中枢性食欲抑制作用がある。インクレチンの作用に基づく糖尿病治療薬として、 DPP-4 阻害薬と GLP-1 受容体作動薬が使用されている。