薬学用語解説
腸炎ビブリオ
ちょうえんびぶりお
Vibrio parahaemolyticus
作成日: 2025年06月18日
更新日: 2025年06月18日
環境・衛生部会
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ビブリオ属に属するグラム陰性通性嫌気性桿菌で、鞭毛をもつ。主に海水中に存在し、1~8%の食塩添加培地で増殖するが、淡水では溶菌する。また、10℃以下では発育せず、4℃以下の低温または60℃以上の熱に弱く、煮沸で瞬時に死滅する。魚介類やその加工食品の摂取によりヒトに感染し、耐熱性溶血毒などの毒素を産生して腸炎ビブリオ食中毒を引き起こす。潜伏期間は12時間程度である。腸炎ビブリオ食中毒は、1980年代までは細菌性食中毒の大半を占めており、現在でも発症は非常に多い食中毒である。主症状は激しい腹痛や水様性の下痢であり、発熱(38℃程度)や吐き気がみられることもある。死亡することはまれで、一般的に2~3日でほぼ回復する。腸炎ビブリオ感染症は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)では五類感染症(定点把握疾患)に指定されている。