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薬学用語解説

水銀
すいぎん
mercury

作成日: 2025年06月18日
更新日: 2025年06月18日
環境・衛生部会
© 公益社団法人日本薬学会

Hg、原子番号80、原子量200.59。ただ一つの液状金属。硝酸に溶け、塩酸に溶けない。油脂と研磨、撹拌すれば容易にコロイド状に分散し、灰黒色のエマルジョンをつくる。工業用として寒暖計、気圧計理化学機械、水銀ランプ、整流器、医薬品として水銀軟膏、また歯科用アマルガム(充てん剤)などに用いる。中毒で問題となるのは塩化水銀(II)(昇汞)や有機水銀である。毒性は、ガス体として吸収されるか、粉末状で皮膚に付着したときに強く現れる。水銀化合物のなかで、水および希塩酸に溶けるものは一般に猛毒で、水に溶けないものほど毒性が弱い。急性中毒では、胃痛、嘔吐、貧尿の後、著明な腎障害、尿閉塞を起す。また、流涎、口や歯茎の腫れを起す。重症では非常に疲労感が強く、頻脈の後、虚脱に陥り、服用後数時間で死亡する場合もある。有機水銀は無機水銀よりも毒性が強く、中枢神経系、特に脳神経障害を起し、歩行・起立不能、四肢運動麻痺、言語障害、難聴、視野縮小、神経障害などにより死亡する。有機水銀が関係した公害病として、熊本県を中心とした水俣病や新潟県の阿賀野川流域での題二水俣病が知られている。