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薬学用語解説

腸管出血性大腸菌感染症
ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきんかんせんしょう
enterohemorrhagic Escherichia coli infection

作成日: 2025年06月18日
更新日: 2025年06月18日
環境・衛生部会
© 公益社団法人日本薬学会

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)では三類感染症に指定されている。グラム陰性無芽胞桿菌である大腸菌はヒトの腸管内では共生状態にあり、病原性を示さないが、一部の菌株は下痢を主症状とする腸管感染症を引き起す。これらの下痢原性大腸菌は腸管病原性大腸菌、腸管組織侵入性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌に分類される。このうち腸管出血性大腸菌はベロ毒素を産生して病原性を示す。ベロ毒素には、その抗原性の違いから赤痢菌の産生する志賀毒素と同一の1型と類似の2型があり、いずれも細胞内に取り込まれてRNAグリコシダーゼ活性を示す。腸管出血性大腸菌はウシ、ヒツジなどの腸管内に存在し、汚染された肉、ウシの糞便で二次的に汚染された食材、水などが感染源となる。70℃の加熱により死滅するが低温では長期間生存可能であり、酸に抵抗性をもつため胃酸の中でも生存する。発症に必要な菌数は極めて少数で、50~100個程度の菌の感染でも発症する。ほとんどの患者で下痢症状がみられ、一部の患者に溶血性尿毒症症候群が併発する。腹痛を伴う下痢で発症し、半数に血便がみられる(出血性大腸炎)。下痢症患者の2~8%に溶血性尿毒症症候群あるいは脳症などの重篤な合併症が発症することがある。