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薬学用語解説

抗生物質
Antibiotics

作成日: 2024年05月13日
更新日: 2024年05月13日
生薬天然物部会
© 公益社団法人日本薬学会

病原微生物に対して殺菌作用、あるいは発育抑制作用(静菌作用)を持つ化合物のうち微生物が産生するものを抗生物質という。さらに、微生物が産生する抗がん、抗腫瘍活性を持つ化合物も抗生物質といわれる。これらは微生物が他の微生物の増殖を抑制するために生合成している。同様の作用を有し、化学的に合成されたものは化学療法薬と呼ばれている。抗生物質には微生物由来の化合物のみならず、それらの合成類縁体も含まれる。代表的抗生物質としては、その骨格に基づきβ-ラクタム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、マクロライド系などがある。

 抗生物質の発見・発明により、人類の最大の脅威であった細菌感染症を激減させることができ、平均寿命は大幅に伸びた。しかし、抗生物質に抵抗性を獲得した細菌(耐性菌)が次々に出現しており、感染症が完全に克服されたわけではない。抗生物質を多用する大病院などでは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のような多剤耐性菌による院内感染が問題となっている。