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薬学用語解説

イソプレノイド経路
isoprenoid pathway , メバロン酸経路, mevalonate pathway, 非メバロン酸経路, mevalonate- independent pathway

作成日: 2024年05月13日
更新日: 2024年05月13日
生薬天然物部会
© 公益社団法人日本薬学会

天然由来の二次代謝産物のなかで、炭素数5のイソプレン単位から成る化合物群にはイソプレノイド(テルペノイド)と呼ばれる一群があり、イソプレノイド経路により生合成される。イソプレノイド経路はメバロン酸を生合成中間体とする「メバロン酸経路」と、メバロン酸が関与しない別の生合成ルートである「非メバロン酸経路(MEP経路)」に分けることができる。イソプレノイド経路から生成する化合物群として、テルペノイド、ステロイド、カロテノイドが知られている。メバロン酸経路では3分子のアセチルCoAから炭素数6の3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリルCoA (HMG-CoA)が生成し、続いて還元を受けると本経路の重要な中間体であるメバロン酸が合成される。その後数工程の反応を経て、炭素数5の炭素鎖伸長反応の出発物質であるイソペンテニル二リン酸 (IPP)に変換される。一方、非メバロン酸経路では、解糖系の中間体であるピルビン酸とグリセルアルデヒド3-リン酸を出発物質とし、脱炭酸反応により、1-デオキシキシルロース5-リン酸が生成する。これが転移反応により2-C-メチル-D-エリスリトール-4-リン酸(MEP)に変換され、その後数工程を経てIPPを生成する(図1)。
IPPと異性化したジメチルアリル二リン酸(DMAP)との間のhead to tail 型の縮合反応により、炭素数10のゲラニル二リン酸(GPP)が生成し、順次、この反応を繰り返すことにより炭素数15のファルネシル二リン酸(FPP)、炭素数20のゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、炭素数25のゲラニルファルネシル二リン酸(GFPP)が生合成される。このようにして生成した炭素数10から炭素数25までの鎖状アルコール二リン酸エステルは、それぞれのテルペノイドの前駆体となっている。一方、トリテルペノイドおよびステロイドはこれらとは異なった経路により生合成される。すなわちGFPPにIPPが縮合するのではなく、炭素数15のFPP2分子がtail to tailの形で結合したスクワレンを共通の前駆体としている。カロテノイドは炭素数20 のGGPPの二量化で生成する(図2)。