薬学用語解説
温病
うんびょう
作成日: 2024年05月09日
更新日: 2024年05月09日
生薬天然物部会
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「温病という概念は、2000年前に記載された「黄帝内経」の中にも「伏気温病(冬に甘受した疾病が春になると出現する)」として紹介されているように、ウイルスの持続感染症などの概念を含む、一種のウイルス感染症をさす。特に、我が国が鎖国政策に入った1640年頃より呉有性の著した「温疫論」の中には、「癘気(れいき)」という強烈な伝染性を有した口や鼻から侵入する邪気の存在が記載されているが、この「癘気」こそが現代のウイルスに相当するものと考えられ、癘気が起こす疾病が「温病」である。細菌感染が抗生物質によって制御可能となった現代では、こうした「癘気」に起因する病態が蔓延していると考えた場合、チフス、赤痢、コレラなど細菌感染症の主体が傷寒病であったと考えると、今後はEBウイルスやヘルペスウイルスなどの「癘気」による「温病」の制圧が、より重要になると考えられる。