薬学用語解説
ビタミンK
vitamin K
作成日: 2025年06月18日
更新日: 2025年06月18日
環境・衛生部会
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脂溶性ビタミンの一種。主要な働きとして血液凝固作用(止血作用)がある。KはKoagulation(ドイツ語で凝固)にちなんでつけられた。ビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン)があり、ビタミンK1は、緑葉野菜、植物油、豆類、海藻類などに多く含まれる。ビタミンK2は、微生物由来であり納豆やチーズなどに多く含まれるほか、体内の腸内細菌によっても作られる。血液凝固因子であるプロトロンビン(第II因子)、 第VII因子、第IX因子、第X因子の肝臓での産生の際、カルボキシル化酵素(ビタミンK依存性カルボキシラーゼ)の補酵素として働く。これらの因子はビタミンK依存性凝固因子と呼ばれる。 一日所要量は、成人男子で150μg、成人女子で150μgであり、 普段の食生活で充分に摂取され、また、腸内細菌叢による供給もある。通常、欠乏症に陥ることはほとんど無いが、抗生物質の投与による腸内細菌の減少や何らかの吸収障害によって、また新生児では腸内細菌叢による新生がないため、ビタミンK欠乏状態に陥ることがある。ビタミンK欠乏症では、血液凝固能の低下がおこる。 プロトロンビンは、ビタミンKが欠乏すると、活性のない、PIVKA II(protein induced by vitamin K absence or antagonist)となる。PIVKA IIは、ビタミンK欠乏の指標とされている。抗血液凝固薬ワルファリンは、肝臓でのビタミンK依存性凝固因子の産生を抑制し、PIVKA IIを増加させ、血栓形成を予防する。ワルファリン投与を行っている場合には、ビタミンKの摂取を制限する。