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薬学用語解説

ビタミンE
vitamin E

作成日: 2025年06月18日
更新日: 2025年06月18日
環境・衛生部会
© 公益社団法人日本薬学会

脂溶性ビタミンの一つで、ネズミの抗不妊症因子として発見された。トコールのメチル化誘導体でクロマン環にイソプレン側鎖が結合した構造をもつ。無色、または淡黄色油状。熱、紫外線により分解されにくいが、非常に酸化されやすい。天然のビタミンEは側鎖に二重結合がないトコフェロールと二重結合があるトコトリエノールに大別され、それぞれα-、β-、γ-、δ-の4種類の異性体が存在する。α-トコフェロールは、自然界での分布がもっとも広く、生物活性も1番高いとされている。ビタミンEは抗酸化作用により、生体膜やリポタンパク質を構成する多価不飽和脂肪酸の過酸化を抑制し、生体膜損傷や動脈硬化を予防する。また、ミトコンドリアの電子伝達系を安定化し、呼吸機能を維持する。酸化されたビタミンEは、ビタミンCによって還元され、再利用される。小腸上皮細胞から吸収されたビタミンEは、キロミクロンに組み込まれ、リンパ管を経て肝臓へ送られる。肝臓ではトコフェロール結合タンパク質と結合し、超低密度リポタンパク質(VLDL)に取り込まれて末梢組織へ供給される。ビタミンEは体内貯蔵量が多いため、ヒトでの欠乏症はほとんど認められないが、未熟児の場合、赤血球膜の脆弱化による溶血性貧血がみられる。一方、栄養補助食品(サプリメント)による過剰摂取により骨粗しょう症を引き起こす可能性が示唆されている。ビタミンEは動植物性食品に広く分布しているが、特に落花生油などの植物油、種実類、卵黄、バター、豆類に多い。