menu

薬学用語解説

ビタミンD
vitamin D

作成日: 2025年06月18日
更新日: 2025年06月18日
環境・衛生部会
© 公益社団法人日本薬学会

脂溶性ビタミンの一種で、抗くる病因子として発見された。ビタミンDには側鎖の異なるビタミンD2(エルゴカルシフェロール、C28H44O、分子量396.66)とビタミンD3(コレカルシフェロール、C27H44O、分子量384.65)がある。ともに白色結晶。水に不溶で多くの有機溶媒に溶ける。光および空気酸化に対して不安定。ビタミンDは各々の前駆体であるプロビタミンD2(エルゴステロール)およびD3(7-デヒドロコレステロール)が紫外線照射を受けて合成される。D2はきのこ、納豆などの食品に存在し、D3は魚や牛乳などの動物性食品に含まれる。またD3は皮膚でも7-デヒドロコレステロールから紫外線と熱の作用で合成される。食物により摂取された、または皮膚で合成されたビタミンDは、まず肝臓で25位が水酸化されて25-ヒドロキシビタミンDになり、さらに腎臓で1α位が水酸化を受けて活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDに代謝される。活性型ビタミンDは小腸からのカルシウムとリンの吸収を促進するとともに、骨からの骨塩の溶出を促す。また、腎臓ではカルシウムとリンの再吸収を促進し、生体のカルシウムとリンの恒常性の維持に寄与している。活性型ビタミンDは骨芽細胞を介して骨吸収を司る破骨細胞の形成と分化を促進する。また、表皮細胞、造血細胞など種々の細胞の増殖と分化に関与している。ビタミンDの欠乏症として小児ではくる病、成人では骨軟化症がある。ビタミンDの腎臓での活性型への変換には、活性型濃度が高くなりすぎないように維持するフィードバック機構が存在する。しかしながら、サプリメントの過剰摂取による毒性に注意する必要がある。主な症状は、食欲不振、嘔吐、異所性の石灰化などである。