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薬学用語解説

ビタミンA
vitamin A

作成日: 2025年06月18日
更新日: 2025年06月18日
環境・衛生部会
© 公益社団法人日本薬学会

脂溶性ビタミンの一つで、抗夜盲症因子として発見された。淡黄色または無色の結晶。紫外線や酸素によって分解されやすいが、熱には強い。炭素鎖末端がアルコール性水酸基(-CH2OH)の場合をレチノール、アルデヒド基(-CHO)の場合をレチナール、カルボキシル基(-COOH)の場合をレチノイン酸という。狭義にはレチノールをビタミンAと呼ぶ。α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテンやクリプトキサンチンはビタミンA前駆体(プロビタミンA)であり、肝臓や小腸粘膜上皮細胞でビタミンAに変換される。プロビタミンAの中ではレチノールが2分子結合したβ-カロテンの効力がもっとも高い。摂取されたビタミンAは、脂及び胆汁酸とミセルを形成して小腸絨毛から吸収された後、小腸上皮細胞内でエステル化され、キロミクロンに組み込まれてリンパ管を経て肝臓へ送られる。体内のビタミンAのうち、約90%は肝臓に脂肪酸エステルとして貯蔵されるが、必要に応じて加水分解され、肝臓で合成されるレチノール結合タンパク質(RBP)と特異的に結合し、目的の組織へ運搬される。ビタミンAは、成長・生殖、視覚、感染予防など幅広い生理機能に関与している。ビタミンAの欠乏症状としては、視覚機能の障害による夜盲症や暗順応遅延、上皮組織の乾燥による角膜乾燥症や毛孔性角化症、粘膜抵抗性の減少による細菌感染症などがある。過剰症状としては頭蓋内圧亢進による頭痛や嘔吐、脱毛、筋肉痛、肝障害などがある。妊婦での過剰摂取は胎児の奇形を引き起す可能性がある。ビタミンAは動物性食品に多く含まれる。プロビタミンAは植物性食品の色素として存在し、カロテンはにんじん、かぼちゃ、ほうれん草などの緑黄色野菜に、クリプトキサンチンは柑橘類や柿などに多く含まれる。