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活薬のひと

 “薬学に関する学科のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とする”ための薬学教育6年制が平成18年に開始され、6年制教育の大きな柱の一つとして長期実務実習が必須となりました。それまでの4年制薬学では臨床現場での実務実習は殆どの大学で必修科目ではなく、その実習期間も1~4週間程度しか実施されておらず、当初は長期実務実習の実現が危ぶまれていたのです。しかし、現在では薬学教育モデル・コアカリキュラムに準拠した(旧コアカリ)病院・薬局合わせて22週間の実習体制が構築され実施されていることは、大学と実習施設関係者各位の努力によるものと高く評価できます。
 旧コアカリが制定されて10年余が経過し、薬学関連領域科学の進歩や薬剤師をめぐる社会の変化などに対応するため、薬学教育モデル・コアカリキュラムが平成25年に改訂されました(以下改訂コアカリ)。改訂コアカリでは、薬学部6年卒業時のアウトカムとして「薬剤師として求められる基本的な資質」10項目(以下、基本的資質)を明確に提示し、その資質修得を目指して学習目標が定められています。10項目の資質修得に最も重要な実務実習に関しては、実務実習事前学習、病院実習、薬局実習と3領域に分かれていた目標が【F 薬学臨床】として整理統合されました。

 【F 薬学臨床】では、GIOとして「患者・生活者本位の視点に立ち、薬剤師として病院や薬局などの臨床現場で活躍するために、薬物療法の実践と、チーム医療・地域保健医療への参画に必要な基本的事項を修得する。」ことが謳われ、8つの代表的疾患を持つ患者の薬物療法に広く関わるべきことと提案されています。では、どの様に実習すれば良いのでしょうか? ご存じのように、旧コアカリでは実務実習の「教育目標」と「方略案」が合わせて提示されていましたが、改訂コアカリでは「方略案」は提供されていません。即ち、改訂コアカリ準拠の実務実習をどのようにすれば良いのかは実は具体的に示されていないのです。
 そこで、改訂コアカリに準拠した薬学実務実習を実現するために、新薬剤師問題養成問題懇談会の下部組織として「薬学実務実習に関する連絡会議」が設置され、薬学実務実習を適正に実施するための指針が「薬学実務実習に関するガイドライン」(以下ガイドライン)として平成27年に公表されました(改訂コアカリやガイドラインなどは次の日本薬学会の薬学教育HPからすべて閲覧することができます。http://www.pharm.or.jp/kyoiku/)。

① これまで以上に大学が主体となる責任がある。
 4年次までの臨床準備教育では、【F 薬学臨床】の前)SBOsで示された内容について、学生が臨床現場でスムーズに参加・体験型の実習を行うことができる水準まで修得させる必要があります。また、卒業時までに修得すべき基本的資質の多くが実務実習でしか体験修得できないため、大学は実習施設と連携を密にして実習の内容と質の担保に積極的に関与し、実習の学習効果を常に確認することが大学側に求められることになります。

② 病院実習と薬局実習を連続し一貫性を確保すべきある。
 より多くの患者等に接し「代表的な疾患」を体験する実習期間を十分に確保して効果的な実習を行うため、実習期間は連続性のある22週間(病院・薬局各11週間を基本)とすることが提案されています。ガイドライン公布後の全国的な議論の結果、薬局・病院の順に合計22週間の学外実習を行うこと、及び連続した実習を確保するために4期制で学生の割り振りを行うことを原則とすることになりました。

③ 指導者は単なる作業ではなく、その業務の意義を理解するように教える。
 薬剤師として修得すべき必要な作業は多いのですが、現場の薬剤師と同様の速さや慣れを優先するのではなく、患者への薬物療法に参画しているとの意識をもって薬剤師業務を繰り返し体験することが求められています。

 平成22年度に始まった6年制実務実習開始当初では、11週間の実習期間のほとんどを調剤室での集薬作業に費やした施設が少なからずありました。私が所属する福山大学薬学部では、現行の11週間の実習期間中に学生のセミナーを3回実施して状況を確認しますが、1回目のセミナー(実習開始約3-4週間後)ならいざ知らず、2回目のセミナー(実習開始約6-7週間後)時にさえ、「患者待たせないように、処方箋記載の通り(なんの薬かわからないが)できるだけ早く正確に間違わないように調剤します。」、「薬の取り間違いが多いので、来週以降は棚の薬の配置を覚えることが目標です。」―――などの発言を聞くことがあります。本来の調剤とは処方箋受け取りから服薬指導までを含むもので、処方箋として提示された薬物療法案に対する評価と判断が含まれます。しかし前述の学生の行動例は単に集薬しているだけですから、所謂薬剤師の業務とは違います。最も重要な違いは、学生の意識の中に“患者”の姿がなく、物質としての薬を集めているにすぎないと思われることです。
 実習に赴く多くの学生たちは、服薬指導にあこがれ、将来は患者に寄り添うことができる薬剤師となる熱い気持ちを持っています。ですから、大学教員や臨床現場の実習指導者は、この学生の気持ちを大事に育てていくことが必要だと思います。
 臨床に係る薬剤師(即ち、薬物療法の専門家)を育てるための最も簡単で重要な方法は、学生が責任感を持って患者と直接かかわる経験を持たせることではないでしょうか。“自分が担当している患者”の薬物療法の評価に責任を持たせるためには、治療経過をモニターして経過表としてまとめる、いわゆる症例検討を多数行って訓練することが必要です。現在の病院・薬局実習でも、ほとんどの学生は数例の症例検討を行っていますが、改訂コアカリ準拠の新しい実務実習では、【F 薬学臨床】で提案された8つの代表的疾患についての症例検討を学生に義務付けることが必要だと思います。
 症例検討の考え方については、ガイドラインの別添4&5に「望ましい参加・体験型実習」として例示がありますので参考にして下さい。

 今回は、紙面の都合上実務実習の実施方法に関しての私見を中心に記述しました。全ての教育の成果は「学生がどこまで目標に到達できたか」の評価で判断されるべきですが、実務実習の評価については触れていません。「薬学実務実習に関する連絡会議」から「薬学実務実習の評価の観点(例示)」も公表されていますので、是非参考にして頂きたいと思います。

薬学実務実習の評価の観点:
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/058/gaiyou/1380575.htm

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