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2019年度学会賞受賞者のお知らせ

2019年度学会賞は、2018年11月15日開催の理事会において次のとおり決定されましたので、お知らせします。

 授賞式  日時 2019年3月20日(水) 14:00~14:30
      場所 幕張メッセ国際会議場コンベンションホールA


薬学会賞受賞者

(応募8件、授賞4件)

阿部 郁朗(東京大学大学院薬学系研究科 教授)
 「天然有機化合物の生合成に関する研究」
植田 弘師(長崎大学 教授)
 「慢性疼痛におけるフィードフォワード性の痛みメモリー機構とオピオイド機能低下」
周東  智(北海道大学大学院薬学研究院 教授)
 「論理的分子設計を基盤とする創薬化学研究」
藤岡 弘道(大阪大学産業科学研究所 特任教授)
 「酸素原子の孤立電子対を利用する斬新的合成反応の開発と展開」

学術貢献賞受賞者

(応募3件、授賞3件)

第1A部門
春沢 信哉(大阪薬大 教授)
 「ヘテロ重原子の特性を生かした新規合成反応の開発とその機能性分子合成への活用」

第1B部門
齋藤 直樹(明治薬大 教授)
 「抗腫瘍活性イソキノリン海洋天然物および関連化合物の化学的研究」

第4A部門
佐々木 均(長崎大病院薬 教授)
 「薬物物性と数学モデルを基盤とした医療ニーズに適した新規製剤開発と応用」

学術振興賞受賞者

(応募11件、授賞6件)

第1A部門
滝澤  忍(阪大産業科学研 准教授)
 「グリーンケミストリー志向型不斉合成反応の開発と多官能性複素環骨格構築への応用」

第1B部門
荒井  緑(千葉大院薬 准教授)
「天然物を基盤とする細胞運命制御」

第2部門
 小川 数馬(金沢大学新学術創成研究機構 准教授)
「診断と治療の一体化を目指すラジオセラノスティクスのための体内動態制御型プローブの開発」

第3部門
 萬谷  博(東京都健康長寿医療センター 研究副部長)
「新規糖鎖修飾機構の理解に基づく筋ジストロフィー症の病態解明と創薬への応用」

第4A部門
 岡田 直貴(阪大院薬 教授)
「皮膚を標的とする免疫制御技術の開発と経皮ワクチン・免疫療法の実用化推進研究」

第4B部門
 津田  誠(九州大院薬 教授)
「神経障害性疼痛におけるミクログリア細胞の役割に関する研究」

奨励賞受賞者

(応募23件、授賞8件)

伊藤 幸裕(京都府立医科大学大学院医学研究科 講師)
「合理的な分子設計と独特な創薬方法論が導くリシン修飾酵素制御化合物の創製」
井貫 晋輔(京都大学大学院薬学研究科 助教)
「天然有機化合物および誘導体の合成とそれらを活用した生体機能の制御と理解」
江上 寛通(静岡県立大学薬学部 講師)
「炭素−炭素多重結合および炭素−水素結合に対するフッ素官能基導入反応の開発」
佐々木拓哉(東京大学大学院薬学系研究科 助教)
「脳の情報処理と末梢機能制御メカニズムの解明」
佐野 紘平(神戸薬科大学 講師)
「水溶性高分子の物理化学的特性に基づくがんのセラノスティックス薬剤の創製」
清水 洋平(北海道大学大学院理学研究院 講師)
「触媒の特性を活かした化学選択的反応の開発」
高山 和雄(大阪大学大学院薬学研究科 助教)
「iPS細胞技術とゲノム編集技術を用いた肝疾患に対する創薬研究」
山梨 義英(東京大学医学部附属病院薬剤部 助教)
「脂溶性物質の体内動態制御機構の解明とその理解に基づくトランスレーショナルリサーチ」

創薬科学賞受賞者

(応募4件、授賞2件)

「選択的活性化血液凝固第X因子阻害薬エドキサバンの研究開発」
国忠  聡(第一三共株式会社 顧問)
森島 義行(第一三共株式会社 メディカルサイエンス部 主幹)
吉野 利治(第一三共株式会社 研究統括部 主幹)
木村 哲也(第一三共株式会社 メディカルサイエンス部 グループ長)
緒方孝一郎(第一三共株式会社 アジア開発部 部長)

受賞理由
 経口FXa阻害薬エドキサバンは、ワルファリンを凌駕する半世紀ぶりの経口抗凝固剤として研究開発に挑戦してきた第一三共のチームが、30年にわたる歳月を掛けて遂に開発に成功し日本で最初に上市したBest in Classの薬剤である。日本では2011年に、米国と欧州では2015年に相次いで承認されたエドキサバンはセリンプロテアーゼ阻害薬であるため、創薬チームはFXa以外のセリンプロテアーゼを阻害しない酵素選択性の高さを追求し続けると同時に、経口吸収性の課題も克服しなければならなかった。第一三共が一社単独で経口FXa阻害薬の研究開発を完遂したその執念と創薬力の高さが非常に高く評価される。実臨床現場での評判も良く、国内でのシェアは高い。一方、海外では先行して上市した2社の経口FXa阻害薬と熾烈な戦いを繰り広げており、グローバルに使用される新薬として今後の成長が大いに期待される。したがってエドキサバンの研究開発は、日本薬学会創薬科学賞の受賞に値するものと判断された。

「MEK阻害薬トラメチニブの創製」
阿部 博行(日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所化学研究所 主席研究員)
菊池 慎一(日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所化学研究所 主任研究員)
吉田 孝行(日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所医薬探索研究所 主幹研究員)
山口 尚之(日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所研究企画部 調査役)
酒井 敏行(京都府立医科大学大学院医学研究科 教授)

受賞理由
 日本たばこ産業株式会社(JT)の創薬研究グループによるMEK阻害剤トラメチニブの創薬は、京都府立医科大学教授の酒井敏行先生が考案した「がん抑制遺伝子を修復する、あるいは活性化する薬剤を細胞のフェノタイプの解析でスクリーニングする」という新しい抗がん剤の開発アプローチの実践であり、我が国発の注目すべきユニークな創薬研究の成果である。フェノタイプアッセイで化合物をスクリーニングし、結果的にはがん抑制遺伝子の一つp15INK4bを増やす化合物が、細胞のサイトカインシグナルトランスダクションでRASやRAFの下流にあるMEK1とMEK2の阻害剤であることを突き止めた。世界的に早期からRASやRAFの阻害剤開発競争が行われていたが、RASの阻害薬はいまだに上市されず、いずれのRAFの阻害剤も副作用が多い中で、MEK1とMEK2のアロステリック阻害薬であるトラメチニブの有用性は非常に高いと考えられ、世界初の国産分子標的薬として自慢できるFirst in Classの薬剤である。2006年にGSK社へ導出され、2013年には米国でMEK阻害薬として世界初で承認され、今や世界60か国で承認されている。このような開発の経緯から、MEK阻害剤トラメチニブの創薬は日本薬学会創薬科学賞に値するものと判断された。

教育賞受賞者

(応募1件、授賞1件)

平井 みどり(兵庫県赤十字血液センター 所長)
 「新薬学教育制度の構築と推進への貢献」

功労賞受賞者

(授賞2件)

村瀬 清志(元山之内製薬 取締役)
横山 祐作(東邦大学薬学部 名誉教授)

佐藤記念国内賞受賞者

(応募1件、授賞1件)

矢野 育子(神戸大学医学部附属病院薬剤部 教授/薬剤部長)
「医薬品適正使用のためのクリニカルファーマコメトリクス」



歴代受賞者