MEDCHEM NEWS Vol.35 No.1
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あらい ひでのり1984年 京都大学医学部卒1991年 京都大学大学院医学研究科博士課程修了 医学博士2009年 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻教授2015年 国立長寿医療研究センター副院長2018年 同病院長2019年 同理事長日本サルコペニア・フレイル学会代表理事、日本老年医学会理事、日本老年学会理事長、日本老年薬学会理事、日本脆弱性骨折ネットワーク理事日本学術会議第25期、26期 会員(第2部、臨床医学委員会)専門は老年医学全般、特にフレイル、サルコペニア、認知症MEDCHEM NEWS 35(1)1-1(2025)1年4回2、5、8、11月の1日発行 35巻1号 2025年2月1日発行 Print ISSN: 2432-8618 Online ISSN: 2432-8626国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長荒井 秀典 現代社会は、高齢化の急速な進行とともに、従来の臓器別医療を中心としたモデルだけでは解決できない「老化」に伴う複合的な健康課題に直面している。フレイルは、中でも老化に関連する重要な健康課題であり、多くの研究者がそのメカニズム・治療法に挑戦しているが、老化そのものへの関心が高まり、そのメカニズムの解明が進んでいる。こうした中、「Geroscience(ジェロサイエンス)」と呼ばれる新たな研究分野が注目されている。Geroscienceは、加齢に伴う疾患や症状の基礎にある「老化プロセス」そのものを標的とすることで、病気の予防や健康寿命の延伸を目指す研究分野である。このアプローチは、個別の疾患治療ではなく、老化がもたらす生理学的な変化そのものに焦点を当てることで、根本的かつ包括的な健康改善を可能にしようとしている。 老化のメカニズムに関して近年多くの知見が蓄積し、ゲノム、オミックス、ミトコンドリア機能、慢性炎症、栄養、運動などに関する研究が進められてきたが、特にGeroscienceの発展において重要な役割を果たしているのが「senolytics(セノリティクス)」と呼ばれる新しい治療薬である。セノリティクスは、増殖能力を失いながらも体内に蓄積して炎症や他の細胞への悪影響をもたらす老化細胞を標的にして排除する薬剤である。老化細胞の除去により、組織の修復や再生が促進され、加齢に伴う機能低下の予防や改善が期待されている。現在、セノリティクスの研究は世界的に進行しており、マウスを用いた実験では、加齢関連疾患の発症予防や健康寿命の延伸効果が示されており、臨床応用に向けた試みも活発化している。 今後は、Geroscienceの最新の進展と、新たなセノリティクスを含む老化制御を目指した治療薬の開発動向に注目して、老化プロセスに基づく予防医学の未来像を探っていきたい。さらに、実際の臨床応用に向けた課題や、セノリティクスがもたらす可能性だけでなく、老化細胞の制御が個々の人間に及ぼす倫理的・社会的な影響も考慮し、老化に立ち向かう新たな治療アプローチの実現可能性を考察していきたい。 高齢化が進む社会の中で、「老化そのものを治療する」という新たなパラダイムシフトに期待が高まっており、本稿が、読者にとって、Geroscienceに関する視野を広げる一助となり、老化という普遍的な課題に対する理解と、未来の健康長寿社会の実現に貢献できるものとなることを願ってやまない。Hidenori AraiPresident, National Center for Geriatrics and GerontologyCopyright © 2025 The Pharmaceutical Society of Japan公益社団法人 日本薬学会 医薬化学部会NO.1Vol.35 FEBRUARY 2025Geroscienceの展望と新たな治療薬への期待

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