MEDCHEM NEWS Vol.34 No.4
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238写真1 講演会風景 2024年度の創薬懇話会(日本薬学会医薬化学部会主催)は、6月20日(木)から6月21日(金)の2日間にわたって、札幌の温泉観光地である定山渓の万世閣ホテルミリオーネで開催されました。新型コロナウイルス感染症の影響後、完全合宿形式となった2023年度に引き続き、今年度も完全合宿形式での開催としました。参加者数は、最終的に54名(大学関係者19名、会社関係者6名、学生(大学院生および学部生)28名、その他(AMED関係者)1名、うち講師6名、医薬化学部会員25名)でした。多数のご参加、誠にありがとうございました。 本年度の創薬懇話会では、6つの招待講演と20件のポスター発表を行いました。6つの招待講演では、アカデミア、製薬企業の比較的若い先生方を中心に講演をお願いし、創薬化学研究の最先端ならびに創薬技術の今後について語っていただきました。 第一日目は、4つの招待講演とポスター発表を行いました。廣瀬友靖先生(北里大学大村智記念研究所)には、「大村天然物を基盤とした天然物創薬研究〜In situ Click Chemistryの活用とリード探索〜」についてご講演をいただきました。北里大学にて単離・構造決定された天然物を活用した創薬化学研究と、標的タンパク質自身に阻害剤を合成させるin situ Click Chemistryの基礎からその応用例までのお話は、天然物を活用して低分子阻害剤まで作るもので、参加者も大いに惹きつけられました。臼谷弘次先生(住友ファーマ)には、「フロー合成技術を用いた原薬製造プロセスの開発」についてご講演をいただきました。新しい薬を開発するうえでとても重要な製造プロセスの詳細と、その一端を担うフロー合成技術について、ご自身の経験を交えたお話をしていただきました。大学にいると触れることの少ない製造プロセスの重要性は、学生の視点を大きく広げる良い機会となり、有機合成をバックグラウンドとした研究者にとっても大変興味深いものでした。山次健三先生(千葉大学大学院薬学研究院)には、「生細胞エピゲノムを感知し介入する化学触媒と予期せぬ発見」についてご講演をいただきました。注目度が高いエピゲノムに対して、有機化合物を用いた直接的化学修飾を施すアプローチは、創薬化学をはじめとしたケミカルバイオロジーの分野での応用が大いに期待できることから参加者の興味を引いていました。また、その研究過程や苦労話も若手研究者や学生にとっては、非常に参考になるものと感じました。西剛秀先生(AMED・前北海道医療大学薬学 部)には、「メディシナルケミストの将来像」についてご講演いただきました。最近、創薬化学でも重点的に取り入れられている機械学習やAIについて、メディシナルケミストを目指す研究者がどのような姿勢で向き合うべきか、抗体医薬や生物学的製剤の開発が多く進む中で、患者のQOLを考えると低分子・中分子がまだまだ求められていることについて、データを交えながら熱く語っていただきました。ケミストが多かった参加者にとっては、前向きになれる言葉をいただきました。4つの招待講演の後にはポスター発表を行いました。20件のポスター発表は、いずれも優れた研究内容で、活発な議論が熱心に交わされ、時間を超過して議論を深めている参加者もいました。参加者の先生方9名に審査をお願いし、優れた発表を行った3名を優秀発表賞に選出し、後日学会ホームページで発表いたしました。大変優れた発表が多く、選考が難航いたしました。 第二日目は、2つの招待講演があり、伊東昌宏先生(武田薬品工業)「タンパク質分解誘導剤の研究と最新の動向」についてご講演をいただきました。実際の創薬現場でも多くの研究が行われ、注目度の高いタンパク質分解剤について、その歴史や基礎的な事項から治療薬の開発研究に至るまでの包括的な話は、大変勉強になることが多く、タンパク質分解剤を検討している研究者にとって参考になるものでした。種田正樹先生(帝人ファーマ)には、「帝人ファーマにおける医薬品研究開発の取り組み」についてご講演いただきました。生物学的製剤の開発ももちろんのこと、低分子医薬品の開発からその製造法をブラッシュアップし続けてきたというご説明をいただきました。また、低分子・中分子医薬品の開発研究のための取り組みとして、他社と共同する形での新組織構築もお話しいただき、新薬開発に対する熱意を感じられました。本年度の創薬懇話会は、以上をもって閉会とし、解散となりました。学会期間中は、普段接することが少ないアカデミアの先生方や学生と製薬企業の研究者が、素晴らしい講演会を通して交流を図ることができたとのお声を多数いただきました。 一日目の夕食後、交流会を実施しました。6名の講師の先生方には宿泊もしていただき、交流会等で学生や教員等と交流していただきました。普段なかなか交わすことのできないお話もでき、参加者で大いに盛り上がりました。 いずれの講演におきましても、活発な質疑応答が行われました。限られた時間のなかで議論しきれなかったことは、講演の合間や夕食時、交流会等でも質疑応答が行われていました。丁寧にお答えいただきました講師の先生方に改めて御礼申し上げます。 創薬懇話会第一日目の中ほどに、鈴木孝禎先生(大阪大学産業科学研究所教授)から、「創薬懇話会2025 in 大津」(2025年6月)についてご紹介いただきました。気候の良い時期の大津での開催は、大変楽しみにしております。 最後になりますが、開催にあたり夕食の際にご挨拶いただき記事「創薬懇話会2024 in 札幌」開催報告

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