〔SUMMARY〕1.はじめに2. 第1世代RIBOTACの研究開発_化合物設計222MEDCHEM NEWS 34(4)222-226(2024)Keyword RIBOTAC, RNA binder, degradation, RNase L松本安正Yasumasa Matsumoto*1・相川春夫Haruo Aikawa*2 RNAには、タンパク質の発現に関わるmRNAをはじめとしてmiRNA、lncRNA等のさまざまな種類が存在し、細胞内で重要な役割を果たしている。そのため創薬ターゲットとしての可能性が期待され、これまでに核酸医薬を中心とした医薬品の研究開発が進んできた。その一例として、標的RNAの分解を目的としたアンチセンス核酸やsiRNAが盛んに研究されてきており、CMV性網膜炎の治療に用いられるVitraveneや、家族性高コレステロールの治療に用いられるLeqvio等が上市されている。一方、核酸医薬はそのモダリティとしての特徴から、細胞内の取り込みや標的組織への送達(肝臓や腎臓を除く)が困難であり、医薬品の開発に結び付かないことも多い。そのような背景の中、筆者ら(筆者①:松本、筆者②:相川)は、米国スクリプス研究所のDisney教 核酸医薬の進展により疾患関連RNAを創薬の標的とすることが可能となり、中でも標的RNAを分解する手法が疾患の治療につながることが近年示されてきている。その一方で、核酸をモダリティとして利用する場合は、細胞膜透過性や標的臓器への送達等の核酸特有の課題から創薬に直結しない場合もある。そのため、低分子による標的RNAの分解技術が開発できれば、それら課題を解決した疾患治療法の開発につながりうると考えられる。本稿では、低分子によるRNA分解技術として、RNA結合分子とリボヌクレアーゼであるRNase Lをリクルートする分子とを連結したヘテロ機能性分子であるRIBOTAC(ribonuclease targeting chimera)の初期研究開発、およびその後の応用について述べる。Advances in oligo-nucleic acid medicine have shown that RNA can be a drug target. Among RNA-targeting approaches, the degradation of RNA is an attractive mechanism for the treatment of diseases. Nevertheless, the intrinsic properties of the oligo-nucleic acid drug such as low cell permeability and difficulty in distributing target tissues, hamper drug discovery. Therefore, RNA degradation could be a feasible approach for drug discovery if we can develop an RNA degrader by a small molecule. In this paper, we describe the initial development and recent applications of RIBOTAC (ribonuclease targeting chimera), a dual-functional molecule integrating an RNA-binding molecule and a ribonuclease recruiter, as a small molecular RNA degradation technology.授の下、低分子による標的RNA分解技術の開発ができれば薬物送達の問題が解決でき、さらなる疾患治療薬 の開発につながりうると考え、本稿の「RNA分解分子RIBOTAC」の研究に取り組んだ。まず筆者①らに よって達成した第1世代RIBOTAC(Ribonuclease Targeting Chimera)の研究開発について述べ、その後に筆者②らによる第1世代が抱えていた問題点を解決した第2世代RIBOTACの研究開発について述べる。そして最後に創薬標的となりうるさまざまなRNAへの応用例とともにその可能性について述べる。 筆者①がDisney研究室で研究を開始した2016年頃には、低分子を用いた創薬標的の分解手法として、タンパク質を分解するPROTAC(Proteolysis Targeting Chimera)が知られていた。これは、標的となるタンパク質に結合するリガンドとタンパク質をユビキチン化するユビキチンリガーゼに対するリガンドを連結させたヘ*1 田辺三菱製薬株式会社 創薬本部 ニューロサイエンスユニット Neuroscience Unit, Research division, Mitsubishi Tanabe Pharma Corporation*2 東京大学 大学院理学系研究科 化学専攻 生物有機化学教室 助教 Assistant Professor, Bioorganic Chemistry Laboratory, Department of Chemistry, Graduate School of Science, The University of TokyoDevelopment history of RNA degraders, RIBOTACs, and its application to in vivo studiesについてRNA分解分子(RIBOTAC)の開発経緯と in vivo実験への応用
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