B ADCを用いたアプローチA 既存のアプローチD non-cereblonの分解薬開発C 催奇形性を避けるアプローチA.既存のアプローチの継続。B.Antibody Drug Conjugate(ADC)にすることで標的ではない細胞での不用意なタンパク質分解は避けるアプローチ。C.催奇形性を起こすネオ基質を分解しないようにうまく開発。D.Cereblon以外で優れた治療作用を誘導できるE3ユビキチンリガーゼを探す(beyond cereblon)。ただし催奇形性とはまた違う想定しない副作用はありえる。220どちらも分解上の難病ネオ基質だけを分解図4 今後の分解薬開発アプローチ化合物難病関連ネオ基質催奇形性ネオ基質群化合物難病関連ネオ基質催奇形性ネオ基質群標的細胞のネオ基質を優先的に分解化合物別のE3どちらも分解難病関連ネオ基質催奇形性ネオ基質群難病関連ネオ基質想定しない副作用のネオ基質群CereblonCereblonADCCereblon体の形で開発するということが、Orum Therapeutics社というバイオベンチャー企業により始められている17)。また前述のARV-471などのPROTACsもいくつか認可されていくのではないかという期待がある。そういう点で、cereblonをターゲットとした分解薬の発展は著しいものになっていくだろう。ただPROTACsについては分子量のサイズが大きい(500を超える)ことから細胞透過性や薬物動態があまりよくない場合が多く18)、最終的にはPROTACsをMGDsに変換していくような研究もなされていくように思える。一例として、国立医薬品食品衛生研究所の出水庸介博士らが開発したPROTAC(H-PGDS)-7(図1)は、ほぼリンカーがなく、cereblonとHematopoietic prostaglandin D synthase(H-PGDS)の結合部分で成り立っており、数十ピコモルオーダーで効果がある19)。これはほぼMGDでもあるといっても過言ではないと考えられる。こういった化合物が今後さらに出てくることが期待される。 一方で、cereblonをターゲットとする限りにおいては催奇形性の懸念があり、すべての催奇形性基質を排除するMGDなどの開発が実現できれば厳格な統制を緩和することができ適応拡大が期待できるが20)、他方でcereblonをお手本に新たなnon-cereblonなE3ユビキチンリガーゼをターゲットとした創薬もどんどん始めてい参考文献 1) Ito, T., J. Biochem., 175, 507‒519 (2024) 2) Ito, T., et al., Science, 327, 1345‒1350 (2010) 3) Kronke, J., et al., Science, 343, 301‒305 (2014) 4) Lu, G., et al., Science, 343, 305‒309 (2014) 5) Kronke, J., et al., Nature, 523, 183‒188 (2015) 6) Tan, X., et al., Nature, 446, 640‒645 (2007) 7) Matyskiela, M.E., et al., Nature, 535, 252‒257 (2016) 8) Petzold, G., et al., Nature ,532, 127‒130 (2016)くことが重要であり、まさしく“beyond cereblon(セレブロンを超える)”が今後要求されていく創薬開発であろうと思われる(図4)1)。また上で紹介したADCの形にするなどの工夫もされていくことで、今後まさしく「タンパク質分解の時代」が医薬生物学界に訪れることになるのであろう。謝辞 筆者の20年あまりのサリドマイド研究に携わってきた多数の国内外の共同研究者に感謝します。特に、半田宏博士(東京工業大学名誉教授)、山口雄輝博士(東京工業大学生命理工学院教授)、安藤秀樹博士(スカイファーマ株式会社代表取締役)、Philip Chamberlain博士(Neomorph CEO)、そして朝妻知子博士(日本医科大学助教)に大変感謝します。
元のページ ../index.html#36