質クパンタ質クパンタ質クパンタ2. 標的タンパク質分解誘導剤の利点と課題TPD経路E3リガーゼバインダー(Bivalent型)生体内経路標的タンパク質バインダーリンカー標的タンパク質分解誘導剤図1 標的タンパク質分解誘導剤によるタンパク質分解経路212E3リガーゼポリユビキチン化ユビキチンがタンパク質のリジン残基に移る標的タンパク質分解誘導剤がPOIとE3リガーゼのPPIをサポートユビキチンプロテアソームプロテアソームによる分解プロテアソームによる分解分解ububE2E3E3E2タンパク質とのPPILysLysLysPOILysPOIE3E3E2E2ubububububububLysPOIubububLysDiscovery System)を事例とともに紹介する。 標的タンパク質分解誘導剤は、POI 1分子をユビキチン化した後、さらに別のPOI分子をユビキチン化することが可能である。このような機構により細胞内において触媒的に作用することで、従来の低分子阻害剤と比べて低用量での薬効が期待できる2)。さらに、POIの分解後に化合物が体内から消失した後もPOIが再合成されるまで薬効が持続する2)といった利点がある。また、標的タンパク質分解誘導剤によるPOIの分解誘導には、化合物によってPOIとE3リガーゼのPPIを誘導し、これらによる三者複合体(ternary complex)が形成される必要がある3)。この三者複合体形成能は、POIおよびE3リガーゼそれぞれに対する化合物の結合活性と相関しないことがわかっている。その特徴から、弱い結合活性しかもたないバインダーでも利用することが可能であり、リガンド結合ドメインがなく強力な結合活性を有するリガンドの創出が困難であったアダプタータンパク質4,5)、転写調節因子6,7)、足場タンパク質8)や酵素活性をもたないpseudokinase9)といったこれまで創薬困難とされてきたUndruggable Targetsに対しても適用できることで、非常に注目度の高い技術となっている。また、POIと他のタンパク質で結合活性の選択性が低いバインダーであっても分解活性の選択性は異なるため、十分な分解選択性が確保できる場合がある。さらに組織選択的もしくは疾患選択的に高発現しているE3リガーゼを用いることで、疾患原因となっている組織選択的にPOIを分解することもでき、安全性面で優位な薬剤も創出可能となる。 一方で、化合物の結合活性が三者複合体形成、ひいては分解活性および薬効と相関しないことから、結合活性を指標とした従来の創薬研究の手法を適用することができない。また、三者複合体の形成を精度高く予測することは計算科学や人工知能(AI)の技術をもってしても難しく、効率的な医薬品創製には課題がある。また、Bivalent型の標的タンパク質分解誘導剤は、その化合物の特性上、従来の低分子化合物に比べて分子量が大きく、水素結合ドナー/アクセプターが多いことから、いわゆるLipinskiのルール・オブ・ファイブ(Rule of five, Ro5)10)を満たさないBeyond Ro5(bRo5)の化合物群であり、化合物プロファイルが問題となることが多い。さらに、TPDに利用可能であると報告されているE3リガーゼは、代表的なVHL、CRBN、IAP、MDM2のほか、DCAF15、DCAF16、RNF4、RNF114など極めて限定的である。PPIの様式はPOIごとに異なることから、各POIに最適なE3リガーゼを探索する上で、適用可能なE3リガーゼの拡充とそのバインダーの創出に対する期待は大きい。しかしながら、新規のE3リガー
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