MEDCHEM NEWS Vol.34 No.4
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5. おわりに200AUTHORの間を行き来する。例えば、必要に応じて一時的に出資先スタートアップの代表取締役(CEO)として成功に導くための準備を行い、その後再びEIRとしての役割に戻ることを繰り返している。 ベンチャークリエーションモデルでは、優秀で経験のある人材と豊富な資金が会社立ち上げ以前の段階から整っており、会社設立後はよほどのことがない限り継続してサポートを得られるのが特徴である。起業家がアイデアをもとに一から人材や資金を集めて会社を立ち上げるモデルとは異なり、非常に効率がよいスタートアップのつくり方であるといえる。一方、VCがリスクを取り主体的に会社をつくる理由から、エクイティの多くはVCが保有することになる。 2024年にアップデートされたMassBioの最新データによると、マサチューセッツ州バイオテック企業への投資額は年々増加傾向にあり、2023年においては76.7億ドルとなっている10)。2021年と比較すると短期的に下落はしているものの、長期的にはこの傾向が続くのではないかと予想される。 筆者が働いているMatchpoint Therapeutics社は、2022年10月にシード資金とシリーズA資金合わせて 1億ドルを調達しており、よいスタートを切った。VCからの調達資金は多いものの、この記事を執筆中の現時点で大手製薬企業の大規模なリストラやスタートアップ企業の倒産なども多く、バイオテック市場全体として厳しい状況が続いている。 ボストンには、大学、病院、研究機関、製薬企業、バイオテック、ベンチャーキャピタルなどのキープレーヤーが地理的にも近い距離に多数存在し、バイオ・ライフサイエンス領域で世界最大のエコシステムを形成している。今後もイノベーションハブとして注目されることが予想される。参考文献 1) Startup Genome, The Global Startup Ecosystem Report 2023, https://startupgenome.com/report/gser2023(最終閲覧日:2024年8月11日) 2) Binney Street Capital, https://bsc.dana-farber.org/(最終閲覧日:2024年8月11日) 3) Mass General Brigham Ventures, https://www.massgeneralbrigham.org/en/research-and-innovation/innovation/ventures(最終閲覧日:2024年8月11日) 4) Matchpoint Therapeutics, https://matchpointtx.com/(最終閲覧日:2024年8月11日) 5) Wouters O.J., et al., JAMA., 323, 844‒853 (2020) 6) Van Norman G.A., JACC Basic Transl Sci., 1, 170‒179 (2016) 7) Wong C,H., et al., Biostatistics, 20, 273‒286(2019) 8) Biotechnology Innovation Organization, How Boston became a 'biotech hub' May 23, 2023, https://www.bio.org/gooddaybio-archive/how-boston-became-biotech-hub(最終閲覧日:2024年8月11日) 9) Chugai Pharmaceutical, Chugai Venture Fund Starts Investment Activities in Drug Discovery Start-Ups to Accelerate Innovation, Dec 19, 2023, https://www.chugai-pharm.co.jp/english/news/detail/20231219150000_1034.html(最終閲覧日:2024年8月11日)10) MassBio, 2023 Industry Snapshot, https://www.massbio.org/industry-reports/industry-snapshot/(最終閲覧日:2024年8月11日) 最近では、日本の大学、製薬企業、スタートアップからもボストンの視察、ネットワーキングイベントやアクセラレーターに参加する機会が多くなってきたと、筆者自身肌で感じる。 本稿が将来、ボストン留学や就職を目指す個人、およびグローバル視野をもつ企業にとり役に立てば幸いで ある。寒原裕登(かんばら ひろと)2011年に博士号を取得後、大阪大学微生物病研究所での特任助教を経て渡米。感染症、免疫分野での基礎研究に従事。ハーバード大学医学部の講師、ボストンの創薬スタートアップ、ベンチャーキャピタルでのコンサルタントを経て、2021年からMatchpoint Therapeutics社で創薬研究に従事。Copyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japan

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