MEDCHEM NEWS Vol.34 No.4
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■ システイノミクス創薬■ 既知の薬剤から開始する共有結合型創薬4-5. 合成ロボティクスによる創薬トランスフォーメーション196すでに薬剤が知られている標的にしか適用できない図6  大鵬薬品のシステイノミクス創薬の強み標的タンパク質標的に固有のシステイン標的タンパク質標的に固有のシステイン既知の低分子薬共有結合型薬剤に変換するための誘導化既知の低分子薬共有結合型薬剤の創製標的タンパク質「共有結合型化合物ライブラリー」システインを有するすべての標的に適用できるスクリーニング標的に固有のシステイン共有結合型薬剤の創製4-4.中分子創薬 当社では低分子医薬品を指向した創薬技術を、自社研究者の長年にわたるたゆまない努力とCVCを通じて発掘される優れた創薬技術を有する社外パートナーとの協業により獲得してきた。ここでは目線を変え、世界中の製薬企業で注力されつつあるニューモダリティ戦略について述べる。 近年、新しい治療を生み出すための分子として、ニューモダリティに対する技術がバイオベンチャーを中心に発展してきている(ニューモダリティとは、低分子薬と通常の抗体以外の中分子薬、ペプチド、特殊抗体、核酸、細胞、遺伝子編集治療などのこと)。多様化する分子種と関連技術があるため、選択と集中が求められる領域である。当社では、長年の低分子創薬研究で培ってきた化学力を発揮できるモダリティの1つとして中分子薬に取り組んでおり、本項では中分子薬の2つの軸について述べる。1つは、2013年に社外より導入した天然物創薬基盤である。標的ベースの創薬へのシフトに伴い、一般的に複雑な薬理作用を有する天然物は、創薬の起点として難易度が高く、近年、天然物創薬を指向する製薬される課題に対して、他のアミノ酸と共有結合を形成可能な新規Warheadの開発を目指して、九州大学薬学部の王子田彰夫教授と共同研究を進めている。システイノミクス創薬の拡張により、さらなる治療薬のニーズに応える創薬基盤への進化を目指している。企業は激減している。当社では、自然界に存在する多様な微生物とそれらが産生する複雑な化合物に着目し、これらと合成生物学の手法を組み合わせることで、製薬ビジネスを国外の資源に依存しない持続可能なものに変革する技術となることを期待している。もう1つは、詳細は割愛するが、環状ペプチドを活用した創薬である。特徴の異なる天然物と環状ペプチドの2つの中分子技術を融合したユニークな創薬への取り組みを進めている。 研究の自動化による生産性向上は、製薬企業において新薬開発の競争力獲得の命題として各社しのぎを削っている領域である。当社でもさまざまな取り組みがあるが、本項では化合物合成ロボティクスの活用について述べる。 化合物ライブラリーは、近年では市販のフォーカスドライブラリーが充実し、またコンソーシアムなどによる企業間による化合物の共有化も進んでいるが、各社で蓄積されたユニークな構造を有する化合物は、独自のヒットを生み出す創薬基盤として運用管理されている。これら化合物ライブラリーの拡充においてボトルネックとなる合成生産性を高めるために、当社では株式会社日立ハイテクとの協業により、全自動合成ロボティクス基盤を構築した。 合成ロボティクスのコンセプトは、同じ反応条件で合

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