4. 化学力を生かした次世代創薬基盤構築に 195低分子薬に新たな機能を組み合わせるコンセプトスマート低分子図5 大鵬薬品が見据える低分子薬の進化従来の低分子薬共有結合型薬剤標的分解誘導薬抗体薬物複合体低分子薬低分子薬 + 共有結合構造低分子薬 + 標的分解誘導構造低分子薬 + 標的に対する抗体4-1.スマート低分子 ~低分子薬の進化~ 従来の低分子創薬でアクセス可能な創薬標的の枯渇に伴い、新薬創製の成功確率の低下が示唆されている2)。近年、バイオ医薬品へのシフトが進む中、当社では低分子創薬技術をさらに進化させることで、創薬が可能な標的領域を拡大すべく挑戦を続けている。 前述のように当社では共有結合型薬剤を創製する創薬技術として、システイノミクス創薬の確立に成功して いる。共有結合型薬剤は、従来の低分子薬を化学修飾 すること(標的タンパク質と共有結合を形成するためのWarheadを導入)により、まったく新しい機能が付加された薬剤である。共有結合型薬剤以外でも、標的分解誘導薬や抗体薬物複合体なども従来の低分子薬に新たな価値を付加した薬剤と考えることができる。いずれもメディシナルケミストの洗練された分子設計力によって創製可能な薬剤であることから、当社ではこれらをスマート低分子と位置づけて、次世代創薬の中核をなす技術に発展させるべく取り組んでいる(図5)。4-2.システイノミクス創薬の確立 当社はシステイノミクス創薬による開発品の創製と並行して、ユニークな共有結合型化合物ライブラリーを重要創薬基盤の1つとして見据え、10年以上にわたって蓄リットがあり、今後もアカデミアとの協業体制を整備し、連携強化を図っていく。4-3.システイノミクス創薬のさらなる進化へ 当社では前述の共有結合型化合物ライブラリーを軸にしたシステイノミクス創薬によって、メディカル・ニーズの高い難治性がんの治療薬創製に挑戦し続ける。一方、システインに対する共有結合型薬剤の創薬技術は汎用化しつつあり、同創薬技術をさらに拡張し、新薬創製の競争力を高める必要がある。システイノミクス創薬の本質的な課題は、共有結合させるアミノ酸がシステインに限定されることである。対象となる疾患や標的が限定積してきた。一般的に共有結合型薬剤を設計する場合、既知の非共有結合型薬剤に対してシステインと共有結合を形成するWarheadを導入する手法がとられる。この非共有結合型薬剤を前提としたアプローチでは、既知の薬剤がない標的に対しては展開が難しく、また、既知の薬剤がある場合においても独自の構造に発展させ難い、あるいは最終的に開発可能な共有結合型薬剤に至る適切な骨格が見出せないなどの懸念がある。それに対して当社は、蓄積した共有結合型薬剤のライブラリーをスクリーニングすることで、非共有結合型薬剤を介さず、直接的に共有結合型薬剤を獲得する手法を採用している。この手法では、新規かつ最適な骨格のリード化合物を獲得するだけでなく、阻害剤の知られていない標的、もしくは未知の阻害様式に対しても共有結合型薬剤の創出 が可能となる(図6)。共有結合型薬剤の代表例としてEGFR阻害剤があるが、多くのEGFR阻害剤が非共有結合型薬剤のゲフィチニブに類似する骨格なのに対し、当社ではzipalertinib(TAS6417)など、新規骨格の阻害剤を見出すことに成功している。向けて
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