MEDCHEM NEWS Vol.34 No.3
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2. バイオ医薬品化学分野の研究活動バイオ医薬品化学分野/先進バイオ医薬品プロジェクト創薬プロテオミクス分野/創薬標的プロテオミクスプロジェクト薬学研究科長医薬基盤研所長担当教授運営委員会近藤 裕郷(2020〜2022)片桐 豊雅(2023〜現在)担当プロジェクトリーダー石濱 泰大野 浩章鎌田 春彦足立 淳秋葉 宏樹(クロスアポイント助教)金尾 英佑(クロスアポイント助教)129図2  連携組織図加藤 博章(2020〜2021)竹本 佳司(2022〜現在)大野 浩章(NIBIOHN併任) 鎌田 春彦(京大薬連携教授)石濱 泰(NIBIOHN併任) 足立 淳(京大薬連携教授)図1  加藤博章研究科長(当時)と米田悦啓理事長(当時)による 連携協定の締結(2020年7月)携および協力を促進するために、加藤博章研究科長(2020年当時)と米田理事長が両機関の包括的な連携協定を締結した(図1)。 正式な連携に先立って、2020年1月に両機関初のクロスアポイント教員として秋葉宏樹が助教として着任し、大野浩章(京大薬・創薬有機化学分野・教授)および医薬基盤研の鎌田春彦博士(NIBIOHN・先進バイオ医薬品プロジェクトリーダー)が兼担教授として参加する 形で、バイオ医薬品化学分野を立ち上げた。さらに同年8月には、金尾英佑がクロスアポイント教員として着任し、石濱泰(京大薬・生体分子計測学分野・教授)と 足立淳博士(NIBIOHN・創薬標的プロテオミクスプロジェクトリーダー)とともに、創薬プロテオミクス分野を新設した。連携組織としての「実践創薬プロジェク ト」はこの2分野からなり、加藤博章研究科長(当時、現在は竹本佳司研究科長)と近藤裕郷医薬基盤研究所長(当時、現在は片桐豊雅所長)も参加する運営委員会によって、本連携研究と人材育成を強力に推進する基盤組織が構築された(図2)。 2つの連携研究室では、学部生および大学院生の配属を受け入れ、未踏創薬への挑戦と次世代の創薬研究者の育成を行っている。本稿では、立ち上げ以来のバイオ医薬品化学分野と創薬プロテオミクス分野の研究活動を紹介し、本実践創薬プロジェクトと創薬研究の将来展望について述べたい。 バイオ医薬品化学分野では、NIBIOHNの抗体創製技術と京大薬の基礎薬学研究を結びつけることで、新たな抗体創薬のための基盤技術開拓と、これを担う人材の育成に取り組んでいる。特に有機化学の力を利用した新技術創製に向けた取り組みを進めている。 抗体に有機化学的な改変を加えるアプローチは近年大きく注目を集め、殺傷性薬剤などを修飾したものが抗体薬物複合体(ADC)として実用化に進んでいる。一方で筆者らは、機能性の低分子を修飾するにとどまらず、化学反応の場として利用するとともに、抗体の分子認識機能の操作を視野に入れたアプローチをとることを考えた。さらに、次世代の抗体改変技術として治療薬、診断薬などの実用化につなげるために、構造生物学や物理化学的解析の知見も利用しつつ、基盤技術の開発、機序解明などの基礎的側面からの研究を進めている。 これまでに開発を進めてきた技術の一つが、抗原に依存した化学反応の創出である。抗原表面の2つの異なるエピトープに結合する2つの抗体に、互いに反応する反応性官能基を修飾すると、2つの抗体が接近して結合した3者複合体が生じる場合にのみ、選択的な化学反応を起こすことができる。本戦略に基づき筆者らは、抗原を鋳型として、2つのエピトープに結合する抗体間に共有結合が形成される技術として、biepitopic antigen-templated chemical reaction (BATER)を開発した (図3)。このような反応が実際に進行することは、蛍光団の形成反応を利用して実証した1)。 この際にモデルとして利用したのが、医薬基盤研において創出されたTNFR2に対する抗体群である。クロスアポイントメント助教の秋葉は、2016年よりNIBIOHN

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