MEDCHEM NEWS Vol.34 No.3
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173表1  研究業務の新分類①「自動型研究」②「自律型(オートノマス)研究」人間の知的・創造的業務が主体となり実施される・実施条件や環境に変化がない・同一作業の繰り返し・作業の安定的な再現性・高速化等が求められる・無停止や連続稼働が求められる・作業の効率化や省力化が求められる図1  創薬分野における自動型研究と自律型研究□「自律型」研究が全体のほとんどを占めている事前「自律型」研究研究準備関連・実験計画・関連文献調査・実施項目決定・実験設計・機器デザイン・他図2  研究全体における自動型研究と自律型研究の割合コンピュータの適用や支援が可能な研究業務・適用業務:定型業務、繰り返し作業・コンピュータ導入による期待効果: 自動化、省力化、連続・無停止稼働、安定化(ロバストネス)、無人運転、他・適用業務:非定型・非同期・不連続業務、調査、プランニング、解析結果の評価・検討、他・コンピュータ導入による期待効果: 筆者が「自律型研究」発表当時はコンピュータの適用や支援が不可能な領域コンピュータ支援/適用定型・繰り返し・連続業務自動型研究(創薬)実験データの収集・実施条件や環境に変化を伴う作業や業務・多様な知識等が必要な業務・データ解析等の知識や技術が必要・事象に応じたさまざまな判断や決定が求められる・さまざまな情報のまとめや知識化が必要・事象等の総合的な判断や想像力等が必要・新たな事象等を創造できる能力をもつ自動型研究実験実施データ人工知能(AI)支援/適用非定型・不連続業務自律型研究(創薬)事後「自律化」研究研究関連日常業務・データ解析・実験評価・新規事項・外挿可能性・文献/特許・まとめ・方向性検討・追試/他・事例調査・発表・論文作成3-4. 研究業務の知的・創造的業務へのAI技術の適用 研究における知的・創造的業務は、古代の農耕時代、に振り分けて考えると、研究業務の大部分が自律型研究(研究全体の7、8割程度)、すなわち知的・創造的業務であることがわかる(図2)。この事実は、研究業務の効率化や高度化、迅速性を目指す限り、研究における知 的・創造的業務の改善が必須であることを示している。近代の機械時代、そして現代のコンピュータ時代と数百年ものあいだ技術の支援がなかった領域である。この知的・創造的研究業務に「情報時代」の革命技術であるAIが参入してきた。 筆者が「自動型研究」と「自律型研究」への分類提 案を学会発表1,2)した1ヵ月後の2022年11月30日、OpenAIによるChatGPT(Generative Pre-trained Transformer)の発表・公開があった。ChatGPTは知

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