MEDCHEM NEWS Vol.34 No.3
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2. 「コンピュータ時代」から「情報時代」への3. 現在から今後の研究業務における新たな分類の提案:「自動型研究」と「自律型研究」2-1. コンピュータ導入による研究実験(業務)の分類の歴史と種類研究」研究」の割合172生成AIの活用や展開、最高のパフォーマンスを得るための準備等について考える。 現在は、ほとんど総ての研究分野や項目においてコンピュータが活躍するコンピュータ時代である。コンピュータはそれ自体の計算、記憶、ネットワーク、通信等のハード上での機能の活用、実験機器や分析機器の制御、さらにソフト的には研究自体も種々シミュレーション、データ解析、画像/音声解析等の多方面で展開され、個々の機能も急速に拡大している。 コンピュータ適用が進んだ結果、多種多様なデジタル情報が急速に集積され、そのデータ量も膨大となり、ビッグデータと称されるようになった。現在はこのビッグデータの利用が可能となり、情報が総てを支配する「情報時代」となりつつある。 研究の分類はコンピュータが研究に導入されてから順次変化してきた。 最初に分類が意識されたのはʻ通常実験ʼとʻ計算実験ʼである。この時期はコンピュータが研究に導入されたが、コンピュータ自体の基本能力も低く、分子軌道計算や分子力学計算等の限定された分野での適用であった。 コンピュータがより積極的に研究に取り入れられ、適用事例や分野も広がってからはʻWET実験ʼとʻDRY実験ʼという分類が一般的となった。溶媒等を用いて実験するというイメージでʻWET実験ʼ。コンピュータによるデータ解析、種々シミュレーション、機器分析、画像解析等の実験は溶媒を使わないことからʻDRY実験ʼと称された。 上記分類は化学系研究分野で頻繁に利用された。一方で生物系やバイオの研究分野ではʻインシリコʼという単語が用いられてきた。以前より生物関連分野での実験はʻインビボʼとʻインビトロʼという2種類に大きく分類されてきた。これに、バイオ分野の研究がコンピュータ主体の研究(実験)であることから、第3番目の分類としてʻインシリコʼが使われた。これはʻインビボʼが生体内実験で、ʻインビトロʼが生体外(試験管内)での実験を意味することから、ʻインシリコʼはコンピュータ、2-2. 新しい基準での研究業務の分類の必要性 前項(2-1)の3種類の研究業務の分類は、研究におけるコンピュータの占める割合が拡大するにつれて、徐々に変化してきた。現在は研究業務でのコンピュータの占める割合や重要度は極めて大きなものとなっており、研究を論じる場合には、コンピュータを用いない研究業務とコンピュータ利用の研究業務の分類は、必須事項となっている。3-1. 「情報時代」における研究業務の分類 研究分野でも、コンピュータの適用や支援が必要となる業務が多くなった。しかし、コンピュータ適用が困難な研究業務も多く存在し、これが研究業務の大きな特徴といえる。この点で、「情報時代」の研究業務の分類を、コンピュータ支援中心の研究業務か、コンピュータの適用や支援が及ばない業務の2種類に分類することが重要になると考える。3-2. 「自動型研究」および「自律型(オートノマス)3-3. 研究業務における「自動型研究」および「自律型すなわちシリコンチップ内で行う実験ということを意味している。 現在は「コンピュータ時代」から「情報時代」へと大きく変化しつつある。このような変化の時代においては、2-2項で述べた研究業務の分類は「コンピュータ時代」のものであり、今後の「情報時代」には異なる基準を有した研究業務の分類が必要となる。 筆者は研究業務の新たな分類として、2種類(「自動型研究」および「自律型(オートノマス)研究」)への分類を提案した(表1)。これらの分類基準の適用は、コンピュータ支援が可能な定型的研究業務であるか、支援が不可能な知的・創造的業務であるかとなる。 上記の研究型を創薬分野に限定してまとめたものが 図1である。 研究業務の全般について自動型研究および自律型研究移行と実験の分類

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