α3-helixα3-helixR1spF3CNHOOONNHNONOOONNONNOOONO5O6N83NOO4NNOO9ONNO2ONO70i487251NOCO96OOφN−30−60−90−1203−90−30−60−120−150−180−150−1800phi167Figure 2. 残基の側鎖改変が引き起こしたKRAS構造の変化X-ray(PDB: 7YUZ)Gln99X-ray(PDB: 8JJS)Switch IIGln99Figure 3. 化合物1のφψプロット(PDB ID:8JJS)AP8784Switch II10Compound 1KRAS-SOS IC50 = 28 nM10ClHNClHNHNKRAS-SOS IC50 = 54 nMHNClHN1HNHN18015012090603011ON306090120150180R3R2CαψC3-1.1残基の側鎖改変がもたらしたKRASの構造変化 ヒット化合物AP8784の探索的な側鎖変換の中で、ポジション7をPhe(3-Cl)側鎖からさらに嵩高い置換基であるHph(4-CF3)側鎖(化合物1)に変換すると、PPI阻害活性が増強することがわかった(Figure 2)。これは筆者らにとって予想外の結果であった。なぜならば、ポジション7のPhe(3-Cl)側鎖はKRAS上の狭いポケットに位置することがX線結晶構造からわかっており、この側鎖をさらに嵩高く改変することは立体的に許容されにくいと考えられたためである。 この不可解な活性増強はタンパク質の構造変化により説明された(Figure 2)。化合物1のHph(4-CF3)側鎖はPhe(3-Cl)側鎖とはまったく異なるポケットに位置しており、そのポケットは比較的柔軟と知られているKRASのSwitch 2領域が外向きに開くことで形成されていた。比較的柔軟性が高いタンパク質表面においては、リガンド側のわずかな構造改変でも標的の比較的大きな構造変換を引き起こしうることが示された。3-2. φψプロットによるペプチド立体構造の半定量的理解 環状ペプチドは一般的な低分子医薬品に比べて柔軟な骨格をもつことから、構造最適化の過程でペプチド主鎖の構造が微妙に変化し、結果として既取得の構造活性相関(SAR)が変化する課題にしばしば直面した。筆者らはその課題に際して、φψプロットによりペプチド立体構造の定量的理解を試みた(Figure 3)。φψプロットはアミノ酸配列の立体構造を主鎖のねじれ(φ角・ψ角)を用いて図示したものであり、一般的にはタンパク質の
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