154AUTHORNEWS編集委員化合物2を選抜し、大きな構造変化を生じることなく6へと誘導できたためと考えている。続いて、ラットの薬物動態(PK)プロファイルを評価したところ、低いクリアランスと高い経口吸収性を示し、これは既知のKeap1-Nrf2 PPI阻害剤の中で最も優れた結果であった。6をラットに経口投与した後、6時間経過して腎臓を摘出し、腎臓中のHO-1の量を測定した。その結果、6は用量依存的にHO-1の量を増加させ、BARDと同程度の効果を示した。以上の結果から、6がin vivoにおいても抗酸化タンパク質の発現を誘導する作用を有することが確認できた。6. おわりに メチル基とフルオロ基のみを導入することにより、ヒット化合物の優れた物性を維持ししつつ400倍以上もの阻害活性の向上を達成した12)。これら小さな置換基の活性に与える大きなインパクトは、コンピューターシミュレーションやITCを用いた解析により説明可能であった。得られたリード化合物6は、良好なPKプロファイルとin vivo活性を示したことから、CKD治療薬の開発において有用なツールとなり得る。原田一人(はらだ かずひと)1997年 大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程修了同 年 日本たばこ産業株式会社入社2019年 同社化学研究所グループリーダー2020年 博士(薬科学)(名古屋市立大学)2023年より現職2020-2022年 創薬セミナー委員、2023年よりMEDCHEM 大竹和樹(おおたけ かずき)2012年 大阪大学大学院薬学研究科修士課程修了同 年 日本たばこ産業株式会社入社2023年より現職小川直樹(おがわ なおき)2002年 京都大学大学院工学研究科修士課程修了同 年 日本たばこ産業株式会社入社2022年 同社化学研究所主幹研究員2023年より現職2024年 博士(理学)(横浜市立大学)参考文献 1) 日本腎臓学会, エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023, https://jsn.or.jp/medic/guideline/pdf/guide/viewer.html? file=001-294.pdf (最終閲覧日:2024年3月8日) 2) Itoh, K., et al., Genes Dev., 13, 76‒86 (1999) 3) Kobayashi, A., et al., Mol. Cell Biol., 24, 7130‒7139 (2004) 4) Pergola, P.E., et al., N. Engl. J. Med., 365, 327‒336 (2011) 5) de Zeeuw, D., et al., N. Engl. J. Med., 369, 2492‒2503 (2013) 6) Crisman, E., et al., Med. Res. Rev., 43, 237‒287 (2023) 7) Hopkins, A.L., et al., Drug Discovery Today, 9, 430‒431 (2004) 8) Jnoff, E., et al., ChemMedChem, 9, 699‒705 (2014) 9) Marcotte, D., et al., Bioorg. Med. Chem., 21, 4011‒4019 (2013)10) Abel, R., et al., J. Am. Chem. Soc., 130, 2817‒2831 (2008)11) Winkler, M., et al., ChemBioChem, 10, 823‒828 (2009)12) Otake, K., et al., ACS Med. Chem. Lett., 14, 658‒665 (2023) 物性の優れたPPI阻害剤を見出す、このチャレンジングな課題に取り組むうえで重要な点は、良好な物性のヒット化合物を選抜することのみならず、効率的な阻害活性向上が期待できる探索領域を見出すこと、そして活性の変化を多面的に解析し、その要因を理解することと考えている。今回の成果は共同研究者のみならず多くの関係者の尽力によるものであり、この場を借りて深く感謝の意を表したい。生方実(うぶかた みのる)1999年 京都大学大学院工学研究科修士課程修了同 年 日本たばこ産業株式会社入社2014年より現職判谷理恵(はんたに りえ)1995年 静岡県立大学大学院生活健康科学研究科修士課程修了同 年 鳥居薬品株式会社入社1999年 日本たばこ産業株式会社出向2014年より現職2021年 博士(生命農学)(筑波大学)Copyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japan
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