MEDCHEM NEWS Vol.34 No.3
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5−TΔS(kcal/mol)(kcal/mol)(kcal/mol)ΔHΔG/lackHN0−2−4−6−8−10om−2.5−6.7152図3  メチル基の導入図4  メチル基の効果IC50(μM, SPR)LEPapp(10−6cm/s, Caco2)Cell CD(μM)WAT1ΔGΔH+4.1+2.7図5  フルオロ基の導入IC50(μM, SPR)LE■X-rayIle461RROO45OOF65l4MeOH390.232.80.28■WaterMapMeXXOHMe■ITC2−TΔS+1.4−4.2−3.7−4.3−8.00.0890.34332.02.80.282556Entropic gainで、4のカルボキシル基のα位近傍のIle461の側鎖が動くことで形成される小さなポケットに注目した。このポケットを適切に占有できれば、阻害活性が向上するのではないかと期待した。 そこで、4のカルボキシル基のα位近傍への置換基を導入することとした(図3)。比較的小さいサイズの置換基を種々検討した結果、R体のメチル基(5)の導入により活性およびLE値が大きく向上することがわかった。 本結果を受けて、このメチル基の効果を詳細に解析することとした(図4)。まず、複合体のX線結晶構造解析では、想定どおりIle461の側鎖の外側へのフリップが確認された。次に、5の複合体のタンパク質の構造を用いて、WaterMap10)による水和サイトの探索と水のエネルギー計算を行った。その結果、外側へのフリップにより形成された新たなポケットに水分子(WAT1)が確認され、導入したメチル基と重なっていた。さらに、この水分子はバルク水と比べてエンタルピー的にもエントロピー的にも不安定であることが推察された。加えて、等温滴定カロリメトリー(ITC)の測定結果からは、エントロピーゲインのみが確認された。以上の結果から、今回のメチル基導入による活性向上は、不安定な水分子が排斥されたことによる疎水効果に起因すると考察した。4. フルオロ基の導入で31倍の阻害活性向上! さらなる活性向上を目指し、化合物5のアミドカルボニル基のα位近傍に位置するGln530との相互作用形成の可能性を探った。アミドカルボニル基のα位に、ここでも比較的小さいサイズの水素結合ドナーおよびアクセプターを検討することとした(図5)。その結果、(S)-フルオロ基を有する化合物6が、10-8乗台の阻害活性を示し、そのLE値はdrug-likeな化合物の目安の0.3を上回った。さらに、フルオロ基の導入は、PSAを増大させることなくアミドのNHとの分子内相互作用を形成するためか、Caco-2膜透過性を向上させた。 細胞評価では、腎メサンギウム細胞における抗酸化物質であるHO-1の増加量を測定した。HO-1を2倍に増加させるときの化合物濃度をCD値とした。結果として、フルオロ基導入によるKeap1-Nrf2阻害作用の増強に伴い、細胞活性も向上した。 先のメチル基に続き、小さなフルオロ基の大幅な阻害活性向上を目の当たりにし、この効果を詳細に解析することとした(図6)。まず、複合体のX線結晶構造解析から、導入したフルオロ基がGln530の側鎖と極性相互 作用を形成することが確認された。次に、分子動力学(MD)シミュレーションを行い、リガンドとタンパク

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