MEDCHEM NEWS Vol.34 No.3
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4. AIMGAIN事業研究142研究を行っていること、およびDEL合成に必須のビルディングブロック(BB)の一部を各製薬企業所有化合物ライブラリーから拠出して産学共用のDELを合成する点である。 当時、J-MODDELではDEL合成の先駆的な論文4)をもとにDEL合成検証を実施していた。J-MODDELではこれまでにない新規DEL合成技術開発も行っており、共同研究開始後、LEUのDEL研究施設において、迅速にJ-MODDEL独自の新規DEL合成技術(特許出願済み)の構築に成功した。また本DELを用いて標的タンパク質Aに対するバインダーのセレクションも行い、実効性を確立した。この独自技術の完成を踏まえ、LEUおよびJ-MODDELはわが国の産学共用DELプラットフォーム構築を加速・拡大・強化させるための新たな共同研究ステージへのシフトを考えるに至った。新共同研究で目指すのは、欧米のメガファーマに対抗し得る、革新的な産学共用のDELプラットフォームの産学連携構築であり、日本の産学のDEL領域での国際競争力をメガファーマに肩を並べ得るレベルにまで一挙に引き上げることである。 DELプラットフォームを深化させるためには新たな基盤技術開発が重要である。LEUは、J-MODDEL協議会員の方々と共同研究を開始した直後から、新たな研究予算獲得に向けた取り組みを行うプロジェクトチームを結成し、国の種々の産学連携研究助成事業の調査・ウォッチを開始した。また、J-MODDELからの提言を受けて、J-MODDELの基盤技術を基にした非営利法人の技術研究組合設立の可能性についても検討を行った。その最中、AMEDが新たな産学連携事業の公募を開始し、その公募要領(2022年11月)によると、“革新的医療技術研究開発推進事業(産学官共同型、AIMGAIN)”は、“国費と企業原資の両方の研究費を組み合わせて、産学官共同による、医療上の必要性が高く、特に緊要となった医薬品、医療機器、ヘルスケア等の研究開発を推進する”という事業趣旨であり、LEUとJ-MODDELの目指す方向性に完全に合致した事業であった。そこでAMED新規公募に焦点を絞ることとした。AIMGAINに応募するにあたっては、現状の共同研究の枠組みをさらに強化する必要が有るとLEUおよびJ-MODDELは考え、研究分担者を加えることで体制の強化を図った。 DELプラットフォーム構築の強化に関しては、図1上右に示したとおり、現状のDEL技術に対するグローバル課題克服には、先進的なAI技術を利用した化合物空間デザインとその可視化、ライブラリー構造の多様性を拡張する革新的なDNAコード化化合物合成法、そして、創薬標的の適応範囲を把握するための高難度標的タンパク質調製技術およびバインダー選抜技術開発等の基盤技術開発が必要である。そこで、独創的DEL構築に向けた新規結合形成反応開発は、生体内(水環境)で駆動する有機合成化学を精力的に展開されている東京大学大学院薬学系研究科の金井求教授に依頼した。高難易度標的タンパク質の調製と、各種物理化学手法によるDELセレクションフロー精緻化研究は、生体成分の物理化学特性や、生命分子間相互作用を多角的に解析・解明されてきた東京大学大学院工学系研究科の津本浩平教授に依頼した。さらにAIによるDELのケミカルスペース解析と新規構造生成を、AI創薬のホープであり、疾患の多階層オミクスデータ解析、統計手法や機械学習アルゴリズムの開発等、多岐にわたる研究を精力的に推進されている九州工業大学情報工学研究院(現在は名古屋大学大学院情報学研究科)の山西芳裕教授に依頼し、それぞれ分担研究者として新共同研究への参画をお願いした。各先生方はそれぞれの専門領域の第一人者であるが、相談当初は、当然のこととしてDELのDの字すらご存じではなかった。LEUおよびJ-MODDELは二度三度四度と各先生方と個別に打合せを行い、わが国創薬の現状、なぜDELの基盤研究を行う必要があるのか等を説明させていただき、研究分担者として参画いただくことの賛同を得た。このようにして、研究代表機関東京大学、研究分担機関東京大学、名古屋大学というアカデミア薬学系+工学系+情報系連合とJ-MODDELという極めてヘテロな新共同研究チームを形成し、AIMGAIN事業採択を目指して、課題名“創薬研究を加速する革新的スクリーニングライブラリープラットフォームの産学連携構築”とする申請書類を2週間程度で作成・提出した。その後、ヒアリングを経て、幸いにも第一次公募 9倍の高倍率の中、唯一の課題として採択を得ることに成功した(2022年12月21日)。 AIMGAIN事業プロジェクト(本事業)では、DEL実用化研究とDEL基盤技術開発研究の二本柱を、非競争領域研究(大学等と複数企業で研究開発成果に関する 情報・知的財産を共有可能な研究開発領域研究。研究 開発成果は最終的に特許・論文として公知化される。

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