MEDCHEM NEWS Vol.34 No.3
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●事業成果のプラットフォーム化と産学協調利用の推進●技術上のグローバル課題nRΔ 図1上左に、わが国製薬産業界におけるDEL利活用の現状を示した。国内製薬企業のDELスクリーニングは全面的に海外ベンチャーへの委託に頼っている。委託費用は高額であり(科学研究費補助金基盤Bの全額以上の予算を要する)、委託試験数は限定的である。それに2. わが国におけるDEL利活用の現状1E000.1481012141618202224262830323436【現状のDEL活用上の課題】●ビジネスモデル上の課題国内DELスクリーニングは海外ベンチャー委託に全面依存・高額な委託費・結果を踏まえた研究は展開し難い・実施試験内容は限られている・開示されるヒット構造情報等は極く限定的・薬にならない構造の化合物が混在・化合物空間デザインが不十分・ヒット選別技術が未熟・適応可能創薬標的範囲が狭いタンパク質精製図1  現状のDEL活用上の課題と現状打破のアプローチ(上)およびDELプラットフォーム(下) 【現状打破のアプローチ】●製薬企業とアカデミアの総力を結集した戦略的技術開発・先進的AIを利用した有効ヒット率の高い化合物デザイン・構造多様性を拡張する革新的DNAコード化化合物合成・高難度標的に適応可能なヒット化合物選抜技術・競争領域で活用するプラットフォームを非競争領域として 産学連携して構築バインダー構造翻訳140ビーズ固定DELセレクションバインダー弾頭部標的タンパク質バインダー分離BB2:ATCATリンカーBB1:CCGCC塩基配列解析データ解析DEL(DELプラットフォーム(下)の図は文献2をもとに作成)Amplification PlotCyclePCR新的な手法の開発が望まれている。1992年に、Brenner, S.とLerner, R.(ともに故人)によって提唱されたDNA- encoded library(DEL)技術は1)、膨大な数(数百万〜数十億)のOn-DNA化合物(DNAタグと低/中分子の標的タンパク質結合部位(warhead)の共有結合体)ライブラリーを混合物のまま標的タンパク質と結合させるアフィニティーセレクション、DNAタグのPCR増幅、次世代DNAシーケンサー(NGS)によるDNAタグの塩基配列解析を通して標的タンパク質へ結合したバインダーのwarhead構造の推定を行うものである。 本技術は、1) 多様性に富む莫大な数のOn-DNA化合物の高速スクリーニングが可能2) 多様な標的タンパク質クラスに対して幅広く高質なヒットバインダーの取得が可能3) On-DNA化合物ライブラリーは混合物のままチューブ内で冷凍庫保管が可能であり、従来の化合物ライブラリーに比べ、管理・運用コストの劇的な低減が可能なサステイナブルな創薬手法であることから、次世代の低/中分子創薬の中核を担う革新的新規ライブラリースクリーニング技術として大変注目を集めている。しかし、残念ながらわが国では、産業界・アカデミア双方における本技術開発は欧米および中国の後塵を拝している。限りある重要な創薬標的タンパク質に対するバインダー取得がネックとなり、創薬の機会を逃しているのが現状である。

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