MEDCHEM NEWS Vol.34 No.2
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2. 再生医療の現状4. 当社での再生医療の取り組み3. 再生医療に関わる規制・制度5. 体性幹細胞を用いた細胞療法64表1  再生医療等製品(同種細胞)の承認品目一覧製品名(一般名称)テムセルHS注(ヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞)アロフィセル注(ダルバドストロセル)ビズノバ(ネルテペンドセル)造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病(急性 GVHD)の治療非活動期又は軽症の活動期クローン病患者の複雑痔瘻の治療水疱性角膜症患者の前房内に移植し、障害された単層角膜内皮組織を再建することを目的として使用効能、効果又は性能JCRファーマ株式会社製造販売業者武田薬品工業株式会社合同会社オーリオンバイオテック・ ジャパン2023年12月時点承認年月日平成27年9月18日令和3年9月27日令和5年3月17日 再生医療とは、患者自身の細胞・組織または他者の細胞・組織を培養等加工したものを用いた医療と定義されている。患者の体外で人工的に培養した幹細胞等を、患者の体内に移植等することで、損傷した臓器や組織を再生し、失われた人体機能を回復させる医療(細胞治療)と、患者の体外において幹細胞等から人工的に構築した組織を、患者の体内に移植等することで、失われた人体機能を回復させる医療(組織移植治療)がある。 また幹細胞は、自己複製能(自分と同じ能力をもった細胞を複製する能力)と多分化能(異なる系列の細胞に分化する能力)をもった細胞と定義されている。用いられる幹細胞としては、限定した分化能を保有する「体性幹細胞」や、受精卵を培養して得られる細胞で、未分化な状態でほぼ無限に自己複製する能力と生殖細胞を含むすべての組織・細胞に分化しうる能力をもつ「ES細 胞」、人工的に多能性を誘導された、ES細胞とほぼ同様の能力をもつ「iPS細胞」がある。特にヒトiPS細胞は2007年に山中伸弥教授が作製に成功され、日本ではiPS細胞に関する研究が飛躍的に進められた。 再生医療は希少疾患や難病等、これまで有効な治療法がなかった疾患の治療ができるだけでなく、慢性疾患や高齢化に伴う疾患に対しても効果が期待でき、医療費の抑制等、経済効果も大いに期待されている。 経済産業省では、2020年に国内で950億円、国外で 1兆円、2030年には国内で1兆円、国外で12兆円、2050年には国内で2.5兆円、国外で38兆円と予測している1)。 2014年11月には再生医療に関する二つの重要な法律が施行された。一つは「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(再生医療等安全性確保法)で臨床研究や自由診療での治療を対象とし、人への安全性に関するリスクの高さに応じて、第1種、第2種、第3種の3段階に分類された2)。 もう一つは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)で従来の薬事法に再生医療等製品の規定が新設された。また再生医療等製品の実用化を促進するため、少ない症例数でも治験で有効性が推定され、安全性が確認できれば、条件付きで早期承認し、その後に原則として7年を超えない期間内に症例を追加して改めて承認申請を行う「条件及び期限付き承認制度」も導入され、再生医療等製品をより早く市場へ提供することが可能となった3)。 当社では以前より眼科領域や皮膚科領域での基礎研究において、角膜上皮細胞や皮膚表皮細胞、線維芽細胞 等、種々の細胞を用いた試験や、タンパク質や遺伝子の網羅的解析、動物での安全性、有効性評価を実施している。また無菌医薬品である点眼剤の生産では、GMP対応での無菌管理、自動生産技術を有しており、これらの技術基盤を基に再生医療等製品の開発に着手した。 現在市場にはいくつかの再生医療等製品が上市されており(表1)、今後市場が拡大していくことが期待されるが、ますます再生医療を普及させ、実用化を促進するためには、安定して高品質な再生医療等製品を低価格で提供する必要があり、そのための課題が山積みの状況で ある。 2014年にiPS細胞由来のヒト網膜上皮細胞を用いた加

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