バイオバンクの試料・情報は、産学の研究者が利活用可能写真2 スーパーコンピューターMEDCHEM NEWS 34(2)109-118(2024)109図1 前向きコホート調査の概要 引用:東北大学東北メディカル・メガバンク機構パンフレット写真1 バイオバンク引用:東北大学東北メディカル・メガバンク機構ホームページMEDCHEM NEWS編集委員会1.東北メディカル・メガバンク機構について 最初に訪れた東北メディカル・メガバンク機構(TMM)1)は、東日本大震災後に地域医療の再生に向けた医療連携システムの構築と未来型医療の実現を目的として設立された(図1)。この機構は、東北に未来型医療の拠点を形成するとともに、そのための人材育成をも目的としている。その根幹は、2種類のコホート調査による血液、尿、DNAなど生体試料を集積したバイオバンク(写真1)と、それらにひもづく多様な疾患情報、生理機能検査情報、ゲノム配列情報、血中代謝物情報、診療・介護情報などの30ペタバイトにものぼる膨大なバイオ・メディ 杜の都仙台にある東北大学は、昨年、国際卓越研究大学の認定候補に選定され、世界をリードする最先端の研究大学として期待を集めている。 2024年1月にMEDCHEM NEWS編集委員会は、東北大学星陵キャンパスにある東北メディカル・メガバンク機構と、広大な青葉山キャンパスの一角に位置する国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構らが整備を進めているナノテラスを取材させていただいた。カル情報である(写真2)。東北地方の沿岸部を中心とした地域住民コホートと妊婦さんを中心にした子世代、親世代、祖父母世代の三世代にわたるコホートにより、総計15.7万人以上のリクルートを達成している(図2)。この継続的かつ大規模な調査と解析により、生体試料のバイオバンクの機能だけでなく、さまざまな生体情報を集積したビッグデータにAIなどを活用することで、それぞれの医療情報、健康情報との統合解析が可能になり、個別化した予防・医療の実現や革新的新薬の創出が期待されている。 これらの生体試料から解析されたゲノムコホート由来の膨大な情報は、統合データベースdbTMMに格納されている。このdbTMMは、高速検索と検索後層別化集団の統計学的自動特徴づけの機能により、正確な層別化情報の提供が可能になっているとのことであった。 東北メディカル・メガバンク機構では、集積された試料・情報の利活用を促進しており、大学や企業の研究者がこれらを利活用可能になっている(図3)。機構内で独自に解析された情報としては、ゲノム解析やメタボローム解析などの結果を統合し記事東北大学 東北メディカル・メガバンク機構、ナノテラス 取材記
元のページ ../index.html#53