3. AIMECS 2023ハイライト4. 日本人研究者の発表5. AIMECS 2023のトピック107写真2 講演会場写真3 ポスター会場 AIMECS 2023の1日目である25日は、welcome receptionの開催のみであり、2日目(26日)のシンポジウムは、RocheのHong Shen先生による抗ウイルス薬の構造最適化に関するplenary lectureで幕を開けた。その後、A、Bの2つの部屋で各々シンポジウムが並行して実施され(写真2)、3〜4講演を1セッションとして計16のセッションが行われた。また、“Young Scientist Presentation”として、若手研究者による口頭発表も行われた。3日目(27日)にはPoster Sessionが企画され、計190件の発表があった(写真3)。4日目(28日)は、Sungkyunkwan大学のWon-Hun Ham先生による、これまで精力的に取り組まれたpolyhydroxylated alkaloid類の立体選択的合成と同氏が立ち上げたベンチャー企 業Yonsung Fine Chemicalsでの取り組みについてのplenary lectureがあった。その後、Closing Ceremonyで、授賞式、AIMECS 2025の予告などが行われ、最後に実行委員長の大役を務めあげられたLak Shin Jeong先生が挨拶を行い、AIMECS 2023は盛会のうちに閉幕した。 まず、講演(口頭発表含む)について紹介する。加藤晃一先生(ExCELLs/名市大院薬)は、IgG Fc領域のフコース付加による抗体の構造変化とその機能変化に 関する解析について紹介された。濵田圭佑先生(東京薬大)は、従来のプロテアソームによるtargeted protein degradationが標的とできない細胞外や表面に存在するタンパク質に対するアプローチとして、二量化アプタマーを用いたlysosome-targeting chimera(LYTAC)を発表された。感染症の分野では、玉村啓和先生(東京医歯大)、林 良雄先生(東京薬大)がそれぞれ、自身の抗ウイルス薬開発研究を基にしたSARS-CoV-2のメインプロテアーゼ、3CLプロテアーゼに対する阻害剤の開発研究について、市川 聡先生(北大院薬)は、11員環縮環構造を有するヌクレオシド系天然物sphaerimicin Aを基盤とした創薬研究について講演された。鈴木孝禎 先生(阪大産研)は、エピジェネティクスに関わるタ ンパク質-タンパク質間相互作用(protein-protein interaction:PPI)に対する低分子創薬のアプローチを、上杉志成先生(京大WPI-iCeMS)は、低分子の自己集積化による生体制御について講演された。大嶋孝志先生(九大院薬)は、カルボン酸の触媒的α位選択的酸化/重水素化について講演され、領域代表を務める学術変革領域研究「デジタル有機合成」の研究成果・今後の展望についてお話しされた。 講演のほかに、詳細は割愛するが、Young Scientist Presentationでは2件の受賞、Poster Presentationでは4件の受賞と、多数の日本人研究者がAIMECS 2023に参加し、大いに研究成果を発表できたといえる。 筆者なりに印象深い講演についてまとめる。昨今、抗体医薬や中分子医薬が創薬化学の領域において注目を浴び、アカデミア、企業を問わず精力的に研究開発が行わ
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