MEDCHEM NEWS Vol.34 No.2
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●ステム -copan●ステム「-copan」をもつ医薬品(日本名、開発企業、承認状況)FAvacopan(アバコパン)104HNCH3HOFFOHNFHNCH3定義: complement receptor antagonists/complement inhibitors(補体受容体拮抗薬/補体阻害薬)薬効分類:免疫調整薬1.Avacopan(アバコパン、キッセイ薬品工業/ChemoCentryx、2021年承認)2.Danicopan(ダニコパン、アレクシオンファーマ/Achillion、2024年承認)3.Iptacopan(イプタコパン、Novartis、日本未承認/2023年米国承認) 補体受容体拮抗薬/補体阻害薬を定義するステムとして「-copan」がある。2019年にINN専門家協議が定義した。ステム「-copan」をもつ医薬品は、補体受容体に拮抗的に作用、あるいは、補体に直接的に作用して補体経路を阻害する。 補体は、抗体の免疫作用を補完する成分として働くタンパク質群の総称である。血液中に存在する補体は、病原体などの感染により活性化される。活性化された補体は、補体経路(補体カスケード)を構成し、食細胞による微生物や異物の貪食の亢進、局所的な白血球の動員と活性化、微生物の膜組織の直接的破壊などの多様な生体防御反応に関与する。30種以上の補体が知られており、補体に作用する医薬品の効能・効果も多様である。なお、補体経路として、古典経路、第二経路、レクチン経路の3種の独立した経路が知られている。 ステム「-copan」をもつ医薬品として、日本では、アバコパン(タブネオス®)、ダニコパン(ボイデヤ®)が承認されている。また、米国では、イプタコパンの塩酸塩(Fabhalta®)が承認されているが日本では未承認である。 アバコパンは、3種の補体経路が収束した最終ステップである補体C5a受容体の選択的拮抗薬である。C5がC5転換酵素によって分解されて生成するC5aがC5a受容体に結合すると好中球のプライミングが生じ、好中球などが炎症部位に動員される。アバコパンは、このプライミングを抑制することにより、血管を損傷する好中球などの過剰な動員を抑制し、抗炎症作用を示す。抗好中球細胞質抗体関連血管炎に分類される顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症を適応とする。希少疾病用医薬品に指定されている。 ダニコパンは、補体D因子の阻害薬である。D因子は、補体C3由来物質に結合した補体B因子を開裂し、第二経路の活性化に関与する。ダニコパンは、D因子に可逆的に結合し、D因子のセリンプロテアーゼ活性を阻害することで、第二経路を選択的に阻害する。ダニコパンは、C5阻害薬であるラブリズマブやエクリズマブと併用投与され、発作性夜間ヘモグロビン尿症を適応とする。後天的な遺伝子変異に起因する発作性夜間ヘモグロビン尿症では、血球表面の保護に関わるタンパク質が欠損した異常な血球が産生されている。異常赤血球は、通常、補体経路が働いて血管内で除去(血管内溶血)されるが、C5阻害薬が投与されると血管内溶血が抑制され、異常赤血球は脾臓や肝臓で循環血から除去(血管外溶血)されるようになり持続的な貧血が起きる。ダニコパンは、C5阻害薬投与による発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療中に発生する血管外溶血を抑制する目的で使用され、希少疾病用医薬品に指定されている。 イプタコパンは、B因子を選択的に阻害し、C5阻害薬投与時の血管外溶血を抑制する。発作性夜間ヘモグロビン尿症を適応として米国で承認されている。加えて、C5阻害薬未投与の患者でも血管外溶血を抑制することが報告されている。日本では、イプタコパンの塩酸塩水和物が承認申請中である。宮田 直樹・中川 秀彦(名古屋市立大学)Copyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japanステム手帖-24

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