塩野義製薬株式会社 ヘルスケア戦略本部 新規事業推進部MEDCHEM NEWS 34(2)103-103(2024)103 今日では企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)は企業活動の中でも重要視されるものの一つであり、製薬企業でもその重要性は増している。塩野義製薬(以下、「当社」)においても多面的なCSR活動を継続している。 当社のCSR活動の一つとして、ヘルスケアに関する情報の提供があり、特に医薬品の正しい使い方や疾患啓発は大きな部分を占める。医薬品についての教育、いわゆる「薬育」は、近年では学校教育にも導入されるなどしているが、学生以外にもニーズはあり、こうした情報をより多くの人々に届けるためには、多様なチャンネル・伝え方を用いることが必要である。 当社では2021年よりバーチャル社員「シオノギカナデ」によるYouTubeを中心とした情報提供活動を展開している(QRコードを参照)。これは仮想空間上のスタジオでシオノギカナデが出演する動画を撮影し、インターネット経由で放映するもので、新しい伝達手段の一つと考えている。シオノギカナデのYouTubeチャンネルでは、2022年より「薬育」をメインコンテンツとして発信を行っており、子どもだけではなく、大人も学べる動画を配信している。 薬育プロジェクトは、適正使用推進や疾患啓発を行うCSR推進部との協力体制をつくることから始まった。薬育で伝えるべきものとは何かという根源的な部分から目線合わせを行い、アイデアを出し合って社会にとって必要とされうる情報をリストアップしていった。このリストから関連情報を調査し、わかりやすさや面白さも考慮して台本の制作を行った。一般的には代理店を通すことも多い部分であるが、専門的な内容を自社の言葉で届けることを重視し、社内で実施している。 内容の正確性の担保、法令やガイドラインへの適合のために、台本の段階から医薬品情報審査室と連携し、細かな内容確認を行っており、内容によっては社外専門家の監修も受けている。 そして、映像制作会社の協力の下、撮影と編集を経て制作されたシオノギカナデの薬育動画は、社内の最終的な確認の後、発信されている。 さらに、本活動はインターネットだけでなく、現実でのCSR活動にも展開している。例えば、CSR推進部による子どものための感染症予防教育(出張授業)で動画が利用されているほか、キャラクターのイラストなどで子どもたちの興味、関心や理解を深めるサポートをしている。 以上、当社におけるCSR活動としてのシオノギカナデについて紹介した。製薬会社とバーチャルという意外な組み合わせが社会に対しての伝達手段として活用されている事例であり、読者諸賢の興味を少しでも得られたら幸いである。Shionogi KanadeYouTubeチャンネル前川雄亮(まえがわ ゆうすけ)2011年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。同年に塩野義製薬に入社。生産技術研究から研究所購買業務を経て、現在は新規事業推進部に在籍。シオノギカナデ AUTHOR Copyright © 2024 The Pharmaceutical Society of Japan前川雄亮Coffee Breakバーチャル社員「シオノギカナデ」による薬育の新しい形
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